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中国市場攻略法!?外国実用新案に60万円

2013/12/09

師走に入りましたが、期待されていた「ものづくり試作開発」の年内公募は不発に終わり、12月24日締切の創業支援補助金で今年は暮れそうですが、これについては既に解説しましたので今回は多くの応募者が見込まれる助成金ネタは見当たりません。

但し、「中国への新製品進出を計画している東京都の企業」というかなり限られた対象ながら、「中国市場を攻略するための裏ワザ」的手法を推奨するという、日本としては珍しい助成金事業(外国実用新案出願費用助成事業)をご紹介します。応募する方は少ないでしょうが、小ネタとして読んでいただけると面白いと思います。

まず、助成対象は海外向けの実用新案申請であり、助成金も上限60万円、助成率1/2と、おそらくこれまでご紹介した中では最も小さい額です。同じ東京都の助成金で、海外向け特許申請への助成金がありますが、こちらの上限300万円と比べてもいかにも少ない額です。

実用新案と特許の違いはご存知かと思いますが、念のため日本国内の例を以下に示します。

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今回この助成金に着目したのは、東京都が紹介文に掲げている下記の文章に引っかかったためです。少し長いですが敢えて全文を引用します。

「東京都では、本年度から外国実用新案出願費用助成事業を開始しました。実用新案は、特に中国においては無審査で早期に登録されるため、容易に権利取得できるという特徴があります。また、出願件数の増加に伴い、実用新案権に基づく知的財産侵害訴訟事件が注目されるなど、知的財産の保護という観点からも非常に重要な権利といえます。この度本事業の追加募集を行うこととしましたので、是非ご活用ください。」

なんだか中国への新製品投入に向けて、かの国の「仁義なき知財戦術」に打ち勝つことだけを目的として設けられた「戦術的事業」のように思えました。でも東京都が単独で中国向け知財戦術支援を行うというのもおかしな気がしたので、国の知財戦略を担う特許庁の情報を調べてみたらこんな文章を見つけました。これも少し長いですが、

「実用新案は、特許と比べると登録期間が短く、権利の安定性も低いものの、実体審査が行われず登録までの期間が短い点、進歩性基準が特許より低い点等の特徴を有することから、中国では、技術開発能力が高くない企業に多く利用されている。また、中国には特許/実用新案同日出願制度があり、この制度を利用して実用新案出願を先に権利化し、後に特許出願が登録要件を満たす場合に実用新案権を放棄することにより特許出願の権利化を図ることもできる。」(特許庁「新興国等知財情報データ―バンク」より引用)

如何でしょうか?東京都がなぜ中国向けの実用新案申請を支援するのかについての完璧な説明ではないでしょうか?この事業は、国が対中国向け知財戦術を考え、都のレベルでそれを具体的に支援するという二人三脚的助成事業のようです。

特許庁が勧める中国での「特許/実用新案同日出願制度」が「使える!」と思った方は、是非ご利用ください。

本記事は2013/12/09時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

冬の水 一枝の影も 欺かず  (中村 草田男)

池か水たまりか、「水」なので凍ってはいませんが、寒いです。これから本格的な冬を迎える直前、木も水も、それらを包む空気も、一切の余分なものをそぎ落とした潔さが伝わります。