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「大義ある熱い志」をもった起業家を支援

2017/08/07

今回は「インキュベンチャー助成事業」という初めてご紹介する事業です。小笠原科学技術振興財団という民間機関が行なっている事業で、平成27年に始まって今年で3回目のベンチャー向け支援事業です。

補助金・助成金事業を行っている民間機関としては新技術開発財団や三菱UFJ技術育成財団などが知られており、これらと同様助成金は先払いです。また1件当たりの上限額については2,000万円と高額の部類ですが、採択件数については過去2回も今回も採択件数が4件に限られており、総予算としては抑えています。

その他にもいくつか特徴があるので順にご紹介します。まず、公募対象者が「ベンチャー起業予定者」または「起業3年目までのベンチャー」とされていて、採択実績を見ても、大学の研究室所属の個人研究者、あるいは起業間もない大学発のベンチャーです。

採択されたタイトルから見る限り、ほとんどが基礎技術のフェーズと思われ、事業としては未知数の、いわゆる「死の谷」の技術が対象となっているようです。助成率が100%であることもこのフェーズの研究者や企業の資金力を理解しているからでしょう。

次に、審査スケジュールを見ると審査の丁寧さが感じられます。規模についてはまだあまり知られていないせいか昨年度の応募総数は9件、採択件数4件と発表されており、今回も同じような数字ではないかと思われます。

というわけで応募総数はかなり少ない方かと思いますが、審査期間はかなり長い時間をかけています。9月1日の締め切り後の書類審査結果の発表までが3か月、さらに書類審査合格者には2か月後にプレゼンテーション選考が行われ、結果通知が2月上旬です。

公募の締め切りから結果通知まで5か月以上の期間を掛けるわけですが、待たされる応募者の方は少々つらいかもしれません。

しかし、これ以降はこちらの勝手な想像ですが、提出された申請書類と、締め切り後に申請者に要求される追加資料をじっくりと吟味するのでしょう。プレゼンテーション選考から結果通知までの期間がわずかしかないことから、申請書類と追加資料でほぼ結果を確定し、プレゼンテーション選考は応募者の人間性を確認する最終面接のような位置付けではないかと思います。

最後に、この事業の公益性重視です。公募要領に示されている審査基準の筆頭が「社会への貢献度」であり、さらに応募申請書の最後に「大義ある熱い志」をA4書式1枚で記入するスペースが用意されています。

以上のように、この事業に関する応募関連の資料から、財団設立理事長である小笠原敏昌理事長の科学技術発展への熱意が伝わってきます。応募される方は何より自身の志の高さと、その研究開発が社会にどのように貢献するかをアピールする必要があります。

ただし、志が高いだけで事業として成功するわけではありません。経営者に必須の営業の力量が無ければ助成金を消費した時点で事業が頓挫してしまいます。応募される方は事業化のベースとなる着実な売上計画にも配慮してください。

本記事は2017/08/07時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

鶏頭を三尺はなれもの思ふ  (細身 綾子)

「三尺とは見事」などと味わうのは後のことで、句を目にした直後は作者を離れて「何を思うのか?十四五本といった子規か、あるいは被爆忌か?」と引き込まれる句です。プロにはかないません。