中小にも、支援者にも、うれしいJAPANブランド - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

HOME > コンサルタントの視点 > 中小にも、支援者にも、うれしいJAPANブランド

中小にも、支援者にも、うれしいJAPANブランド

2021/04/26

コロナ禍で海外展開などとんでもないという昨今ですが、今回はあえて中小企業庁がポストコロナをにらんで海外展開を支援する「令和3年度JAPANブランド育成支援等事業」(以下JAPANブランドと表記)をご紹介します。

1社当たりの上限額500万円、総額予算は年間8億円と、事業再構築補助金の総額1兆円超えと比べるとかなり小振りな補助金ですが、経済産業省としては以前から結構力を入れている事業です。

というのは、もう何年も前から中小企業白書で報告されているとおり、海外展開を始めた企業とそうでない企業の業績が、数年後には明らかにその差が大きくなっていること、及び日本国内の市場が人口減少により縮小することが確実なためです。

その状況を反映して、新型コロナ感染症が広まる前までは、インバウンド対応と海外展開を支援する補助金の種類と予算は増える一方でしたが、さすがに今の状況では海外展開に予算を確保しても動ける企業はいないので、予算的には縮小しています。

ただし、今年から事業の形を意欲的に変えてきました。事務局が事前に公募・選定した「支援パートナー」が提供する支援サービスを受けることが応募の条件とされたのです。

この「支援パートナー」はJAPANブランドと並行して現在公募中であり、5月17日が締切となっています。が、「支援パートナー」として選定されても、直接補助金が支払われるわけではありません。

JAPANブランドの採択者が海外展開事業を実施する際、それを支援する「支援パートナー」のサービスの対価として採択者が支払った費用が補助金の対象となるという仕掛けです。

わかり難いかもしれないので具体的な例で説明します。

「支援パートナー」の例としてシンガポールで行われる産業機械部品の展示会を継続的に開催しているイベント会社を考えてください。

東南アジアに自社の機械部品を輸出したい企業は、このイベント会社を「支援パートナー」に選定してJAPANブランドに採択された場合、もちろん採択者はシンガポールの展示会(今であればバーチャル展示会かもしれませんが)に参加することになります。

そして、その展示会への参加費用に加え、現地向けの広告宣伝や現地語の宣伝動画作成などもイベント会社に依頼した場合、その費用が採択者からイベント会社に支払われ、一方で、採択者にはイベント会社への支払いの2/3が補助金として補填されるのです。

この「支援パートナー」は、事務局である中小企業庁が事前に選定した企業なので、信用や実績はいわば政府保証付きで、提供されるサービスを安心して利用できるという訳です。

一方「支援パートナー」である企業としては、補助金はもらえませんが採択企業が支払った費用の全額が売上となるので、「支援パートナー」から見れば政府から無償で新規顧客を紹介されたことになり、こちらも嬉しいでしょう。

さらにこの事業を「支援パートナー」であるイベント会社の立場で一歩踏み込んで見直すとチャンスはさらに広がります。

「支援パートナー」に応募したイベント会社は5月末までに公表され、自社を選んだ応募者にと一緒に7月締切のJAPANブランドに応募することになります。

そこで、JAPANブランドでは一つの事業で複数社で共同申請が許され、その上限額は500万円×4社で2000万円(5社以上でも上限額は2000万円)とされています。これは補助金の額ですが、補助率が2/3(1~2年目)なので、「支援パートナー」に費用として支払う金額(補助事業対象経費)の上限は概算で2000万円×3/2=3000万円です。

そこで、このイベント会社は、補助金で2/3が補填されるというアドバンテージをアピールして応募者を4社集めれば、政府の支援を受けて最大3000万円の売り上げが確保できることになります。

実際には、補助事業対象経費3000万円の全額がイベント会社1社に支払われることはないかもしれませんが、それにしてもイベント会社にとって嬉しい事業かと思います。

という訳で、今後海外展開を計画している企業にも「支援パートナー」企業にとっても、JAPANブランドは金額の割に楽しみの多い事業かと思います。ご興味ある方はご検討ください。

本記事は2021/04/26時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

ひとつづつ光輪まとい猫柳 (伊藤 柏翠)

我が家の玄関にもここしばらく猫柳が活けてありますが、「光輪まとい」とは猫柳のあのふわふわした花の様子というより、むしろ日々強まる春の光に意識が向いていることが良くわかります。