顕在化する課題解決に向けた研究開発を100%支援 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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顕在化する課題解決に向けた研究開発を100%支援

2022/07/04

今回は色々なフェーズのスタートアップへの支援メニューを提供しているNEDOの事業として、昨年から新たに追加された新メニュー「SBIR推進プログラム」の2022年度第2回公募が始まったのでご紹介します。

新メニューなので早めにご紹介したかったのですがタイミングが合わず、今回は、第1回公募の締切の翌日、6月28日に第2回公募が始まりましたので良い機会となりました。これまでにSTS等一連の「研究開発スタートアップ支援事業」などを解説しましたが、こちらの事業はかなり性格が異なります。

まず「研究開発スタートアップ支援事業」は補助事業であるため、応募者が提案する研究開発課題を事業化するための費用の一部(2/3など)を補助する仕組みですが、「SBIR推進プログラム」についてはNEDOが研究開発課題を提示します。

つまり、この事業への入り口はNEDO側から示された研究開発課題を解決するための技術に関する概念実証(PoC)・実現可能性調査(F/S)である「フェーズ1」を募集する「委託事業」となり、費用は消費税を含め全額NEDOの負担となります。

ただし、公募の度に示される研究開発課題はNEDOが決めたものではなく、内閣府に設けられたガバニングボードという会議体から指示されるということなので、背景について少し詳しく調べてみました。

基本となる法律として2020年に改正された「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」(以下「活性化法」と表記)がありました。

この法律は、既存の大企業をあっという間に凌駕してしまったGAFAのような企業を、日本でも育成しようという目的で改正が行われました。そして、そのための制度として中小企業の研究開発を支援する既存のSBIR制度を「流用」することとしたようです。

今回の事業名にも含まれているSBIR(Small Business Innovation Research)とは、元々は、1999年に導入された「中小企業等経営強化法」を根拠法とする制度でした。当時、米国の産業競争力の礎を築いたと言われる同名の制度をモデルとして名前もパクッたのです。

当時のSBIR制度についても、中小企業等に対して年間400億円程度の研究開発型補助金が支出され、それなりの成果を上げてきました。

しかし、前述の通り日本ではGAFAに相当する企業はついに現れず、それどころか国際競争力が低下の一途をたどる日本の状況が危惧される状況となりました。

この状況危に機感を覚えた政府は、「未来投資戦略2018」策定のころから日本でのイノベーション推進について本格的な見直しを始めました。この見直しの中で、SBIR制度は2019年、根拠法を「活性化法」に変更したのです。

またその後の検討の成果の一つとして、内閣府が全省共通のインベーション推進計画である「第6期科学技術・イノベーション基本計画」を取り纏め、この計画は2021年3月に閣議決定されました。

その「基本計画」の中で「ニーズプル型のイノベーション」という言葉が使われています。技術的アイデアが先行してその使い道を開発する「シーズプル型」と対となり、顕在化している技術課的題を解決するための研究開発及び事業化するという手法です。

例えば、実用化後の技術的価値が見通せないほど大きいといわれている量子化技術やAI技術の開発はシーズプル型であり、それらにチャレンジするスタートアップを支援する補助金がNEDOの「研究開発スタートアップ支援事業」であるといえるでしょう。

逆に、CO2削減のための個々の技術課題などは典型的なニーズプル型でしょう。昨年からNEDOによる「SBIR推進プログラム」が始まったということは、NEDOがニーズプル型のイノベーションにチャレンジするスタートアップの支援も担うということになります。

日本人は顕在化している課題を解決する能力が長けていると思います。「SBIR推進プログラム」は公募の度に異なる課題がとして示されるので、興味ある方は補助金の紹介ページをご覧ください。

本記事は2022/07/04時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

向日葵の群れ立つは乱ある如し (大串 章)

おそらく作者の意図とは全く関係なく、従軍して帰らぬ夫を探して広大なひまわり畑をさまようソフィア・ローレンを思い出しました。この連想には、ひまわり畑の場所が今のウクライナであったことも関係がありそうです。一日も早く戦争が終わりますように。