中小の新エネルギー開発をステップ毎に支援 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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中小の新エネルギー開発をステップ毎に支援

2022/08/01

昨年もこの時期にご紹介したNEDOの「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」を、今年も解説します。現在今年度の第2回目となる「新エネ中小・スタートアップ支援制度」の公募中です。

昨年のご紹介では、この補助金が2010年に始まり、何度かマイナーチェンジと事業名の変更を繰り返しつつも継続され、構成が複雑化してきた歴史があり、かつ次の2点が徹底されている事業であると説明しました。

  • 「新エネルギーの開発」がテーマであり、「省エネルギー」と明確に技術分野を分けている
  • 技術開発レベルに準じ、いわば初級から入って、審査を受けながら中級、上級へと順に進んでいくステージゲート方式である

一方、現在の事業名となった2020年度から、産学連携で応募する場合の初級、中級に該当する「社会課題解決枠フェーズA、B」で求められる技術課題が、ものづくり中小企業が得意とする分野となったこともお伝えしました。

以上を踏まえて、今回は2020年度以降の採択の状況とステージゲートの動きを追ってみました。NEDOは事業ごとに各年度の「実施方針」が示されていて、その中で過去の実績に関するかなりの情報を公開いているので、色々と追跡できるのです。

まず採択状況とフェーズの内訳を見ます。フェーズというのは、公募要領ではNEDOが設定した課題に取り組む産学連携体への支援である「社会課題解決枠」フェーズA(フィージビリティ・スタディ、以降、「FS」)から始まる枠組みで、ほかに次のフェーズがあります。

同じく「社会課題解決枠」の基盤研究を対象としたフェーズB、申請者が提案する課題に対してVC(ベンチャーキャピタル)等の支援を受けて取り組む「新市場開拓枠」フェーズα(FS)およびβ(基盤研究)、基盤技術を持つ中小企業が実用化研究開発に取り組むフェーズC、事業化実証開発であるフェーズD(2022年度2回目では公募無し)。
  • 2020年度 1回目 応募数35、採択数20(採択率57%)フェーズA:6、B:5、C:6、D:3
  • 2020年度 2回目 応募数10、採択数4(同40%)フェーズA:4
  • 2021年度 1回目 応募数32、採択数15(同47%)フェーズA:4、B:8、C:3
  • 2021年度 2回目 応募数7、採択数14(同50%)フェーズA:2、B:3、D:2
  • 2022年度 1回目 応募数21、採択数5(同24%)フェーズB:3、C:2
突っ込みどころ満載ですが、まず「国内外のVCの資金を呼び込む」(基本方針より)目的で設定したフェーズα、βが1件もありません。日本ではまだまだVCの資金でFSや基盤研究などアーリーステージを支援する体制はできていないようです。

次に2022年度の第1回公募の採択率が、それ以前の50%前後から24%へと大きく下がりました。応募数そのものがそれまでの年と比べて2/3に減ったこともありますが、それにしても突然の急落です。

実績を調べてみると、2020年度に採択された20件の内2021年の7月にステージゲート審査を通過してフェーズBに移行し、そのまま2022年度も継続しているテーマが8件あるとのこと。

年間総予算はここ数年15億円前後で安定しており、昨年度からの継続テーマの予算もそこから賄うので、新規の応募のための予算が減少した、つまり実質的な競争倍率が上がったようです。

また、2022年度第1回目の結果でFSに当たるフェーズAがゼロとは驚きました。応募件数そのものが少なくなったのかもしれませんが、これについては今のところ情報がなく理由がよくわかりません。

とはいえ、今年も第2回の公募が行われるということは予算がまだ残っているということです。NEDOが示す課題の中に自社の得意とする技術を見つけた方はぜひ応募してください。

本記事は2022/08/01時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

翡翠に杭置き去りにされにけり (八木 林之助)

カワセミの実物は実は10年以上見ていないのですが、この鳥は動画や写真の対象とされることが多いせいか身近な存在に感じます。杭が置き去りにされた、とみたこの句はなるほどカワセミの動きをとらえたようです。熱波のなかで涼風に出会った気分です。