サポイン、法認定計画が不要に - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

HOME > コンサルタントの視点 > サポイン、法認定計画が不要に

サポイン、法認定計画が不要に

2020/02/17

令和2年度の「戦略的基盤技術高度化支援事業」(以下、サポイン)の公募が始まっています。

前回ご紹介した「ものづくり補助金」は今年度から内容が大きく変わるようですが、サポインもそれに劣らない大きな変更がありました。

まずは「法認定計画」が応募条件から削除されました。「法認定計画」とは「特定ものづくり基盤技術高度化指針」に基づいて認定された「特定研究開発等計画」、又は「地域未来投資促進法」に依って認定された「地域経済牽引事業計画」のことです。

これから応募を考えようという時に条件から外された制度の説明は不要かとも思いますが、サポインの歴史としてはかなりの大事件なので、簡単に私見を書きます。

そもそも補助金としてのサポインは、平成18年制定の「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づいて認定された「特定研究開発等計画」(法認定計画)の実施を、資金的に支援する手段の一つとして設けられた制度です。

他の手段としては政策金融による信用保証の特例や政策投資の対象に加えるなどもあって、主役はあくまで法認定計画だったので、経産省は当初、法認定の事前取得を応募の条件としていたのです。

しかし、応募する側としては、どうしても補助金が目的となるため、サポイン公募と同時に法認定計画に着手するという傾向が徐々に強まってきました。そこで、事前の法認定取得ではなく、サポインの申請日との同日の法認定申請も認めることになりました。

それでも応募者にすれば一つの補助金に応募するために記載方法の異なる2つの事業計画を作成し、しかもその内容を整合させなければならないという、計画の内容という本質とは全く関係がない事務的な負担が大きいことに変わりはありません。

実は当社も事務処理上の無駄を経験し、ご支援先が担当経済局に対してクレームされたという経験があるのですが、今回法認定計画が条件から外れた理由の中にこのようなクレームが重なったことがあるのではないかと推測します。

次に平成29年度から、もう一つの法認定計画とされていた「地域経済牽引事業計画」が同様に条件から削除され、しかも、サポインのテーマ選定が「特定ものづくり基盤技術高度化指針」に限定されたことが挙げられます。

「特定ものづくり基盤技術高度化指針」は産業の変化に合わせて数年に一度少しずつ修正されている技術指針ですが、「地域経済牽引事業計画」は地域の中核となる企業が中心となって、地域産業の振興を目的する事業計画であり、両者は全く性質が異なります。

それだけに前回までのサポインではこの制度になじむところまで行っていなかったのですが、応募条件に法認定計画が不要となったことをきっかけにして、「地域経済牽引事業計画」は完全にサポインの枠外となってしまいました。

最後に、補助事業終了後5年間の事業計画に、付加価値額と給与総額の目標を追加するという変更を挙げます。

主たる研究等実施機関(中小企業者)に対して1.付加価値額が15%以上(年率平均3%以上)の向上及び2.給与支給総額が7.5%以上(年率平均1.5%以上)の向上という目標が設定されました。

前回のものづくり補助金では事業完了後、給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標が達成できていない場合、補助金の一部の返還を求めるという大変化がありましたが、今回のサポインでは返還を求めるところまでは至っていません。

ただし、申請書の様式の中にこの目標を達成するための年度計画を記載する欄が増えており、事業完了後その計画が予定通りか否かを報告しなければならないようです。

以上のようにサポインは従来と異なる内容となっているところがいくつかあるので注意が必要です。各経済産業局では4月24日の公募期限まで相談窓口を設けているので、ぜひ有効に活用してください。

またこちらは今回に限ったことではありませんが、申請するためのe-Radも年単位で見れば随時改良が加えられ、少しずつ取り扱いが異なってきています。

これから登録する場合はもちろんですが、数年ぶりにe-Radを使うという場合はできるだけ早い段階で取り扱い方法を確認されることをお勧めします。

本記事は2020/02/17時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

近づけば向きあちこちや 梅の花 (三橋 敏雄)

三橋敏雄は時々あきれるほど素直な句を詠む人で、梅に惹かれて近づいてみたら花があちこち向いていて驚いた、という感じそのままを形に整えた印象です。驚かした犯人はやはり春でしょう。