サポイン改め「Go-Tech」 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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サポイン改め「Go-Tech」

2022/03/07

今回は、令和4年度から始まる「成長型中小企業等研究開発支援事業」(Go-Tech事業)をご紹介します。この事業そのものは確かに初回の公募ですが、公募要領にも(旧サポイン事業、旧サビサポ事業)という副題がついています。

サポインとは「戦略的基盤技術高度化支援事業」の愛称で長く親しまれた事業であり、一方サビサポとはどちらかと言えば「新連携」の呼称の方が知られている「商業・サービス競争力強化連携支援事業」です。

2つの事業を1つにまとめた印象を受けますが、サポインの内容がほとんど継承された「通常枠」に、ファンド等の出資が条件とされた「出資獲得枠」が追加された構成になっています。

ただし、どちらの枠も共同体の構成条件はサポインと全て同じであり、「A機関」「B機関」などの事業管理機関の定義も、説明に使われているモデルケースの図も全て前回のサポインの公募要領からのコピーと言って良いものです。

補助金上限額についても、「通常枠」では「単年度で4,500万円」、「2年度事業で7,500万円」「3年度事業で9,750万円」と、全てサポインと同額です。

一方、「出資獲得枠」は、補助金の総額上限が3億円と拡大されていることに加え補助事業開始から補助事業終了後1年までに、ファンド等の出資者からの出資を受けることが見込まれるという条件が付いているのが新しい点です。

さらに補助金の支払総額に、ファンドの支払総額の2/3までという条件が付いています。つまり最長3年の事業期間中に必要な費用総額が3億円である場合、ファンドが1億円出資すれば補助金の総額上限は2億円となり全事業費が自己資金なく賄えることになります。

逆に費用総額が同じく3億円であっても、ファンドが5,000万円しか出資してくれない場合、補助金は1億円しか出ないので、不足分の1億5,000万円は自身で調達しなければならないことになり、ファンドの出資額によって大きく条件が異なってきます。

加えて、応募申請時にファンドによる出資に関する誓約書が必要なこと、事業終了の1年経過後までに予定額の1/2以上を出資することなどの縛りも付いていて複雑であり、これらはサポインでもサビサポでも前例のない条件です。

そして、もう一方のサビサポから踏襲された条件はほとんどないのですが、あえて言えば代表機関である中小企業に対する「成長目標」という考え方であり、具体的には以下の条件です。

  1. 事業終了後5年以内を目処に付加価値額が15%以上(年率平均3%以上)の向上、かつ給与支給総額が7.5%以上(年率平均1.5%以上)の向上を達成
  2. 事業終了後5年1年目から最低賃金を地域別最低賃金+30円以上とする

このうち1.についてはもともとサビサポの条件であったものが先行して令和2年度以降のサポインにも拡大適用され、今回そのまま本事業に踏襲された条件であり、2.については本事業で初めて追加された条件です。

これらは、最近の事業再構築補助金やものづくり補助金を検討された方には見慣れた内容かと思います。いわゆる「生産性向上」の具体的な数値目標です。

以上から、この補助金の実態を大胆にまとめれば、日本の産業力を高める基盤技術の開発支援に、「成長目標」という賃上げの仕組みを組込み、ファンドの資金を巻き込む試みと言えるでしょう。

「乗った」のいう方も多いかもしれません。締切は4月21日(水)です。早速ファンドとの交渉を始めましょう。

本記事は2022/03/07時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

春一番 柩ぐらりとかつぎ出す (宮下 翠舟)

春の嵐の季節、かの国では多くの人々が今日も非業の死を遂げつつあります。黙祷。