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NEDO、スタートアップの支援を強化へ(前編)

2023/04/10

これまで何度もご紹介しているNEDOの「研究開発スタートアップ支援事業」は事業期間が2014年度~2023年度とされているため、今年あたりからそろそろ次のスキームが見える時期かと思っていたのですが、なんと既に今年度からシフトが始まっているようです。

3月31日から公募が始まった2023年度の第1回「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」(以下、「ディープテック事業」)がまさにその中心となる事業と思われます。今回はこの「ディープテック事業」をご案内しますが、内容が盛りだくさんなので今回は「前編」といたします。

ディープテック事業に関する4月7日付のNEDOの説明資料によれば、シフトが1年前倒しとなった理由が、内閣府の「新しい資本主義実現会議」で昨年11月28日に決定された「スタートアップ育成5カ年計画」に示されている3本の柱のなかで

第二の柱:スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
(4) 新エネルギー・産業技術総合開発機構による研究開発型スタートアップへの支援策の強化

を担うためであることが確認できます。

NEDOの資料によれば「研究開発スタートアップ支援事業」を構成していた事業名の内、STSやPCAが、「ディープテック事業」のスキームとして取り込まれていることがわかります。

そして、「ディープテック事業」にはSTS、PCAの発展形のスキームDMPが追加されています。各スキームの上限額などの概要は補助金のページで確認していただくとして、ここではこれらのスキームの特徴を説明します。

ただし、説明がしやすいので、「研究開発スタートアップ支援事業」時代と比較して、最も大きな違いが現れている、DMPから始めます。

DMP:Demonstration development for Mass Production
Mass Production(量産化)という言葉が表す通り、製品開発のフェーズを過ぎて、場合によっては数百億円規模の大型設備投資を行っても収益が確保できることを実証するフェーズへの支援であり、助成金額の上限も25億円と高額です。
これまでの「研究開発スタートアップ支援事業」では最大でもPCAの2.5億円が助成金額の上限であり、新しい「ディープテック事業」のスケールの大きさがわかります。

PCA:Product Commercialization Alliance
製品やサービスの研究・開発が一定程度進展しており、適切な初期市場およびそれに続く主要市場(メインストリーム)の選択ならびにビジネスモデル等の構築を通じた収益化を目指す段階が対象とされています。

DMPの準備段階であり、実用化研究開発の後半に該当します。ただし、上限額は5億円または10億円と、昨年までのPCAの上限額を大きく超えており、より大規模な実用化開発が求められています。

STS:Seed-stage Technology-based Startups
PCAに先立つ実用化研究開発の前半に該当し、上限額は3億円または5億円で、要素技術の研究開発や試作品の開発等に加え、事業に向けた技術開発の方向性を決めるための事業化可能性調査の実施等が対象です。

と、概要の紹介だけでかなり長くなってしまいました。「ディープテック事業」への応募では、連携するVCやCVC(Corporate Venture Capital:スタートアップに投資する事業会社)との関係が重要な意味を持ち、その関係がSTSやPCAの補助金上限額にも影響します。これについては次回の後編でご説明しましょう。

本記事は2023/04/10時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

やすらかに死ねさうな日や濃山吹 (草間 時彦)

作者はグルメ俳句とサラリーマン俳句で有名ですが、この句は一味違うようです。何歳ころの作か気になったので検索してみたのですが、あちこちに引用されているわりに制作年の情報は見つかりません。でも年齢に関係なく、自然と接すると、ふとこのような思いがよぎり、心が安らぐときはありそうです。