NEDO、スタートアップの支援を強化へ(後編) - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

HOME > コンサルタントの視点 > NEDO、スタートアップの支援を強化へ(後編)

NEDO、スタートアップの支援を強化へ(後編)

2023/04/24

前回に引き続きNEDOによる2023年度第1回「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」(以下、「ディープテック事業」)について説明します。(前回の内容はこちら

前回、この事業への応募については、連携するVCやCVC(Corporate Venture Capital:スタートアップに投資する事業会社)との関係が重要な意味を持ち、その関係がSTSやPCAの補助金上限額にも影響すると書きましたが、その前にVCとCVCの違いについて簡単に触れます。

VCは、投資家としてスタートアップ企業に資金を提供し、リターンを得ることを第一の目的としています。一方、大企業が自社の事業戦略に沿ったスタートアップ企業への投資を行うCVCは、自社事業の発展や成長を促進することを目的としており、必ずしもリターンが第一の目的とは限りません。

以上は先刻ご承知という方もおられるでしょうが、NEDOは、これを踏まえて本事業で、「パートナーVC制度」という新たな仕組みを導入しました。これによってVCもCVCも自社の利益や事業だけでなく、スタートアップに対しても重要な役割を担うことになります。

そもそも本事業は、前回説明したSTS、PCA、DMPの3つのスキームのすべてでVC、CVC他の出資者(以下、「VC等」)から助成対象となる事業費の1/3以上の出資を受けることが応募条件となっているのですが、さらに「パートナーVC制度」により、応募企業の事業化へのVC等のコミットメントをより強く求められることになるのです。

すなわち、「パートナーVC制度」により、これまでスタートアップ支援事業の審査対象とならなかったVC等の能力、具体的にはハンズオン能力や資金調達の対応力が、応募した事業計画の審査項目に加えられることになります。つまりVC等の実力も審査対象となるということです。

また3つのスキームの内、STSではパートナーVCの存在が必須条件とされ、PCA、DMPの2つのスキームでは必須ではないものの、パートナーVCの存在を「審査で考慮する」とされていることから、パートナーVCがいない場合は不利となります。

応募者に出資するVC等がパートナーVCになるためには、応募する事業計画を対象とした投資ラウンドでリード(最大出資)を取ることは当然ですが、さらにVC等が作成するハンズオン計画書等の添付が必要となります。

NEDO は事業計画と合わせ、添付されたハンズオン計画書により、パートナーVCのハンズオン能力、資金調達への対応力等について審査を行い、事業の採択を決定するとされています。

したがってディープテック事業では、応募申請書の作成に取り掛かる前に、出資してくれるだけでなく、ハンズオン計画書まで作成してもらえるVC等が確保されていることが必要となります。

これはもう「ディープテックに応募するために、条件に合う出資者を探す」ということではなく、まずハンズオンでの支援を含めたVC等との連携ができていて、その「連携体としての資金調達の手段としてディープテックに応募する」という姿でなければ採択は難しいということかと思います。

このように考えると、VC等との関係が今時点で連携体とまでは言えない状態であれば、公募中の第1回締切、5月25日にはまず間に合いそうにありません。

しかし、年1回の公募が基本であった前身の「研究開発スタートアップ支援事業」と異なり、驚くことに年間4回も継続的に公募が行われると予告されています。従って2回目以降の公募をターゲットとすれば時間はあるので、VC等との連携体を構築する取組から始められるようお勧めします。

本記事は2023/04/24時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

まぶた重き仏を見たり 深き春 (細見 綾子)

花冷えの桜が終わり、急に暑くなった今日この頃ですが、気温が上がるとたちまち「春深し」の気分になります。綾子が感じたまぶたの重さは果たして仏か自分自身か?