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「中小企業成長加速化補助金」3次公募~最後の1回と、2次公募の数字が語るもの

2026/08/31

中小企業成長加速化補助金

コンサルタントの南郷です。8月20日、「中小企業成長加速化補助金(3次公募)」の公募要領が公開されました。

申請期間は 令和8年9月29日(火)~10月29日(木)15:00 です。

そして今回、「令和7年度補正予算については、本3次公募をもって終了となる見込み」と明示されています。来年度があるとは限りません。実質的なラストチャンスと考えて動くべきです。

本補助金は、当サイトでも1次公募・2次公募の際に記事として取り上げました。今回は、3次公募の骨格の確認、2次公募からの変更点、2次公募の実績データの読み方——の3点に絞ります。


3次公募の骨格

項目内容
補助率/上限額1/2/5億円
対象者売上高10億円以上100億円未満の中小企業者
(直近3年の課税所得年平均15億円以下)
投資額*1要件1億円以上(税抜)
*1建物費+機械装置費+ソフトウェア費のうち資産計上するものの合算
賃上げ要件1人当たり給与支給総額の年平均上昇率4.5%以上(全国一律)
事前要件申請時までに「100億宣言」*2がポータルに公表済みであること
*2「売上高100億円」を目指し、実現に向けた取組を行うという宣言
補助事業期間交付決定日から14か月~24か月
申請期間令和8年9月29日~10月29日15:00
申請方法電子申請:Jグランツ(GビズIDプライムのアカウントが必要です)
スケジュール1次審査結果:令和9年1月中旬
プレゼン審査:2月15日~3月5日
採択公表:3月下旬以降

まず動くべきは「100億宣言」と「GビズIDプライム」です。100億宣言の公表手続には通常2~3週間、内容に不備があればさらに時間を要します(公表要領はこちら)。GビズIDプライムも取得に約2週間。9月29日の受付開始から逆算すれば、この2つは今週中にでも着手すべきです。


2次公募からの主な変更点

上限5億円・補助率1/2・投資額1億円以上・賃上げ4.5%という骨格は据え置きです。

では、変更点はというと、「抜け道を塞ぐ」方向に集中しています。

具体的に3次公募の公募要領やFAQにおいて、追加または表現が精緻化された内容を見てみましょう。

内容3次公募での扱いと実務インパクト
投資額1億円の判定建物費・機械装置費・ソフトウェア費のうち資産計上するものに限る
→ 一括損金処理予定のソフト費・改修費は外れる
設計等の外注資産計上する場合は外注費ではなく各資産科目に計上
→ 正しく整理すれば投資額が上がり、
「(外注費+専門家経費)<投資額」の要件クリアにも有利
全額返還の範囲「給与支給総額」を目標に選んだ場合でも、
基準年度の1人当たり給与支給総額が申請直近期を下回れば全額返還
→ 増員で総額を膨らませる設計は塞がれた
足下の賃上げ交付決定までに文書で従業員等へ表明することが必須
→ 未達自体に返還義務はないが、手続を怠れば不採択・交付決定取消
→ 目安として2次採択者の実績(平均3.3%)が提示

このほか、

  • 更新投資(能力向上を伴わない設備入替)は対象外
  • 賃上げ判定に用いる基準年度・最終年度の定義の精緻化
  • ハウジングサービスや事業化計画コンサル費は対象外

なども加わっています。

特に効くのは表の最初の2つです。投資額1億円要件が「資産計上分に限る」と締められた一方、設計外注費は各資産科目に寄せるルールが明確化されました。分母を削る変更と押し上げる変更が同時に入っている、ということです。費目の整理次第で1億円クリアの可否が変わりますので、真っ先に手を付けてください。


2次公募の数字を読む

さて、公開されている概要資料の後半に、2次公募の実績データが掲載されています。1次公募のときと同様、ここが1番の読みどころです。


倍率は下がったが、油断は禁物

採択倍率は1次 約6.0倍 →2次 約3.9倍。ただし申請件数は1,270件→872件と減っています。

一方で100億宣言の登録数は1,517件(1次締切時点)→3,091件(2次締切時点)と倍増しました。

100億宣言はしたが申請は見送った層が相当数いる、ということです。要件厳格化による自己選別が働いた結果でしょう。

今年度は3次が最後となれば、この見送り層が戻ってくる可能性は十分あります。倍率3.9倍がそのまま続くと考えないほうが安全です。


主要指標(2次公募・中央値)

指標採択者(n=224)申請全体(n=872)
全社売上高成長率(年平均)30.5%26.0%
全社付加価値増加率(年平均)35.0%28.6%
労働生産性成長率(年平均)23.7%18.0%
売上高投資比率54.7%38.5%
最新決算期の売上高20.5億円26.9億円
補助事業全体に要する経費(税抜)11.3億円10.3億円
EBITDAマージン9.4%6.8%
1人当たり給与支給総額の増加率(年平均)6.5%6.0%
足下の賃上げ3.0%3.0%
自己資本比率43.8%34.4%
ローカルベンチマーク得点22.3点21.0点
ROA5.1%3.7%

出典:中小企業成長加速化補助金(3次公募)概要資料。申請全体には採択者を含む。


読み取れること(1)規模は不利要因ではない。むしろ逆

最新決算期の売上高は、採択者の中央値20.5億円に対し申請全体は26.9億円。採択者のほうが小さいのです。FAQ Q12でも「足下70億円の企業が有利ということにはならない」と明言されています。評価されているのは規模ではなく伸びしろ。売上15~25億円規模こそが本命ゾーンとみてよいでしょう。


読み取れること(2)差がついているのは「投資比率」と「財務」

売上高投資比率は採択54.7%対全体38.5%。最も差の大きい指標のひとつで、審査基準の「企業の収益規模に応じたリスクをとった投資となっているか」がそのまま数字に出ています。

同時に、自己資本比率(43.8%対34.4%)、EBITDAマージン(9.4%対6.8%)、ROA(5.1%対3.7%)、ローカルベンチマーク得点(22.3点対21.0点)と、財務面でも一貫して差がある。つまり「身の丈を超える投資額を、身の丈のある財務で実行する」という両立が採択ラインです。


アドバイス

アドバイス2次公募の採択者224者における「金融機関による確認書」の提出率は100%(224件/224件)でした。制度上は「該当者のみ」の任意提出書類ですが、実質的に必須と考えてください。しかもFAQ Q77では、この確認書とプレゼン同席をファンド等の出資者が代替することはできないと明記されています。取引金融機関との調整は、投資計画の骨子が固まった段階で早めに始めるべきです。


読み取れること(3)「足下の賃上げ」は、まだ差がついていない

足下の賃上げ(申請直近期から基準年度までの1人当たり年平均上昇率)は、採択者・申請全体ともに中央値3.0%。2次公募では差別化要因になっていません

裏を返せば、3次で審査上の強調と表明の義務化が入った以上、ここは今後効いてくる項目です。全体が3%前後に張り付いている今、4%台を提示できれば相対的に目立つ余地があります。

なお、事業終了後の賃上げ計画のほうは、1人当たりで採択6.5%・全体6.0%(中央値)。要件の4.5%ちょうどでは明らかに足りないことは、改めて確認しておきましょう。

本記事は2026/08/31時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

コンサルタントのひとりごと

「補助金が取れなければ、やらないのか」

2次公募の概要資料には、審査員の感想が載っています。その中の一文が刺さりました。——「自社の投資対象のテーブルに乗ること(原文ママ)が前提。補助金が取れなければ何もしない『補助金ありき』となっていないか」。

耳の痛い指摘です。私たちのような支援者にとっても同じこと。100億宣言は3,091件に達しましたが、2次公募の採択は224者。宣言した企業の大半は、この補助金を得ていません。それでも宣言は残り、目標は残ります。

補助金は背中を押す装置であって、行き先を決める装置ではない。今年度はこの3次が最後になるのなら、なおのことそう思うのです。