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IT融合による新社会システムの開発・実証プロジェクト

2012/08/07

今回はNEDOによる新規事業、「IT融合による新社会システムの開発・実証プロジェクト」のご紹介です。

NEDOとはかなり長く付き合ってきましたが、この事業にはかなり珍しい特長がいくつか見られます。

まず冒頭に「IT」がついていますが、NEDOにはITを専門とする部署はありません。「どこの部の担当?」と思ってみてみると、なんと総務企画部を始めとして普段はつながりのない4つの部が並んでいます。こんな体制の公募は見たことがありません。

次に事業名に、意図不明の英語表記がついている!
Japanese Technology for Humanity・・・人類のための日本の技術?人間性への日本の技術?どう訳しても何が言いたいのかよくわかりません。

そこで基本計画を読み進むと、「Cyber Physical Systems(CPS)」ということばが出てきます。これは米国を中心に数年前から顕著になってきたセンサー技術やスーパーコンピュータによるデータ分析技術などITの発達を背景に、物理世界とITの世界を結ぶというアプローチです。

実は経済産業省はこの概念を「IT融合」という言葉で表し、昨年の11月に重点分野としてエネルギー・ヘルスケア・都市交通・農業・ロボット・コンテンツという6分野の選定を終えています。

でも日本では情報通信(経産省では「IT」総務省では「ICT」)は総務省の管轄とされています。そこで総務省関連の資料を当ってみたら次のような資料が公開されていました。矢印ファイル

見ての通り、今後の日本におけるCPSへの取り組み方針を解説したNECの昨年の資料です。これを見るとどうやらCPSのスタートは総務省が一歩リードといったところでしょうか?

でも今回の公募を見ると経産省及びNEDOは、この新しい分野で十分自分たちが貢献すべきフィールドがあると考えており、それを総務省にとられないように一刻も早く実績を積み上げたいという意図が見えてきます。どうやらここでも郵政省時代から続く総務省と経産省との領土争いが行われているようです。

そう考えると、4部門合同というわかり難い実施体制や、はっきり言って全くこなれていない公募要領、にもかかわらず新分野事業のスタートとしては珍しく、5年間最大で19.5億円という大型予算もなんとなく理解できます。

恐らく来年度に向けて、経産省・NEDOはCPSへのアプローチという大きな流れの乗り遅れないための体制づくりを進めていると推察します。そして今回のこの準備不足の公募は「来年からのスタートでは総務省との競争に勝てない」との、経産省・NEDO焦りの表れと見ます。

本記事は2012/08/07時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

夏河を 越すうれしさや 手に草履 (与謝 蕪村)

今年はまだ川遊びをしていません。この句などみるとすぐにでも奥多摩の渓流に向かいたくなります。下の句がいかにも蕪村さんで、子供のころの感覚が戻ります。