どうなる?平成31年度の補助金
例年通り、8月31日までに各省から財務省への平成31年度当初予算の概算要求が出そろったようです。これから12月末の国会に向けて各省と財務省との長い攻防が始まります。
また、これに続いて平成30年度の補正予算案も出てきますが、こちらの方はリアルタイムの経済状況や政治状況が反映されるため、今年度については自民党の総裁選挙の結果やその頃の経済状況が補正予算案の内容に影響を及ぼすことになるでしょう。
そこで今回は補助金のご紹介をお休みして、中小企業向けの補助金政策に関係が深い経済産業省の概算要求を覗きながらその傾向を予想してみます。
といっても、最近の中小企業向け補助金政策はご存知のとおり予算額1000億円の「ものづくり補助金」や500億円の「IT補助金」が補正予算で行われているように、8月末の当初予算要求の内容だけでは全貌を予測することはできません。
現に今年、平成30年度当初予算1771億円に対してほぼ平成30年度中に消化される平成29年度補正予算の総額が2040億円と、補正予算の方が大きかったのです。そしてこの傾向はここ数年続いています。
という訳で、8月の概算要求で垣間見えるのは、今年から来年にかけて政府が何を重視しているかというレベルでの方向性といったところです。
その目線で中小企業関係の予算を見ると、平成31年度の中小企業関連予算のポイントとして筆頭に挙げられているのは「事業承継問題」です。今年度は「生産性向上」の次に位置していましたが、来年度はトップで、経済産業省がますます重要視しているのが分かります。
事業承継につては、今後5年の内に後継者不足のために廃業を余儀なくされる中小・小規模事業者が大量に発生するとの予測に基づいて、5年間の期間限定で手当てを行うことにしており、来年度も世代交代の促進とM&Aの支援の2本柱で進めるようです。
次のポイントは中小企業の「生産性向上」です。この課題は長年中小企業政策の筆頭でしたが平成31年度は「事業承継」に次ぐ位置となりました。とはいえ、やはり最重要な課題の一つでしょう。
生産性向上で目新しいのは、これまですべて前年度の補正予算として行われてきた「ものづくり補助金」が、平成31年度は当初予算化された点です。ただ、予算は100億円。少ないですね。平成29年度の補正予算では1000億円でした。
この100億円について、公開された資料をよく読むと、これまでの「生産性向上に資する設備投資」ではなく「生産性向上に資する試作開発を行うための設備投資」と書かれていて、最新設備をシンプルに導入するだけが目的の事業ではないようです。
試作開発についてはものづくり補助金の中で予算枠が縮小し続け、とうとう今年の第2次平成29年度補正での補助金では削除されたのですが、やはりイノベーションは重要との認識でしょうか、来年の当初予算で復活しました。
でも、アベノミクスが続いている今の時点でシンプルな設備投資への1000億円前後の補助金がなくなるとも思えません。何らかの形で平成30年度の補正予算として今後組み込まれると予想しています。
あるいは、来年度は消費税増税が行われる年なので(総裁選の両候補者ともやるといってます)、そのための補正予算枠(数兆円といわれてます)の一部として取り込まれるのかもしれません。
最後に中小企業向け補助金を含む3つ目のポイントとしては「地域の稼ぐ力の強化・インバウンドの拡大」としてまとめられた「地域未来投資促進事業」、「地域まちなか活性化支援事業」、「国内・海外販路開拓強化支援事業」等が挙げられています。
さて大筋では以上のような方向性ですが、次期総理大臣を選ぶ9月の自民党総裁選の結果がどうなるのか?
大方の予想通り安倍現総理が勝ったとしても、石破氏に対してどのような勝ち方をするかによって補正予算の組み方も変わってくるでしょう。この後の動きに注目しましょう。
季節の俳句
肩に来て人懐かしや赤蜻蛉 (夏目 漱石)
練馬の我が家の周りはまだ少し畑や木立が残っていて、そろそろ赤とんぼの季節です。いつも不機嫌でありながら実は寂しがり屋だったと言われている漱石ですが、掲句はそのあたりの消息が伝わる句かと思います。
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