最先端技術と農業の「コラボ」 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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最先端技術と農業の「コラボ」

2019/06/11

企業向け補助金のご紹介ということなので経済産業省系の支援事業が多くなりますが、今回は農林水産省による「官民連携新技術研究開発事業」をご紹介します。

主要なテーマは農業振興なのですが、タイトルにある「新技術」がご紹介するポイントです。

公募要領によると、金額面では補助率1/2としながら補助金の上限は示されていません。これでは感覚がつかみにくいので、過去の実績から類推してみます。この補助金は平成9年開始と意外と歴史が長く、今年度で23年目となります。

これまでの22年間での採択実績は95件なので平均4.3件、直近でも平成29年度が4件、30年度が5件なので、おそらく今年度も4、5件と予想します。そして今年の予算が2億円弱と公開されているので、1件当たりの平均上限額は4~5千万円といったところでしょう。

さて、この事業は公募要領にある通り「国際化の進展に耐える競争力の高い農業の育成」が目的であり、そのためには農村農業整備事業の効率化や農業生産性の向上を実現する機械のコスト削減のための新技術が必要とのこと。

この新技術としては、ロボット、ICT、AI、センシングといった最先端技術が列記されています。逆に、これらの技術開発に携わっている研究者や企業も農業を今後の大きな市場と見ているので、これは相思相愛の関係と言ってもいいでしょう。

この現状において、農林水産省が実施する、つまり農業の立場で行われる補助金の内容を確認することで、現在の農業の課題が浮き彫りになると思います。それではどのような技術が求められているのか見てみましょう。

公募要領に5つの課題が示されているのですが、各課題の見出しをご紹介するより、その説明のために示されている事例の中のキーワードに注目したほうが理解しやすいと思います。

最も頻出するキーワードは「水利施設」及びその関連語で、水資源の確保と管理、パイプライン等の水利施設の監視・点検・劣化予測・耐震強化など、農業において水利設計の適正化と効率的な運用が最重要事項であることが分かります。

そして次のキーワードは「再生可能エネルギー」です。小水力発電や太陽エネルギーの利用、あるいは電源や水源が乏しい傾斜地などにおける省エネルギー型灌漑システムなどが挙げられています。

マスコミで紹介される農業での新技術はAIを用いた人工光直物工場、あるいはドローンを使った生育状況や病虫害の監視などが目立ちますが、この補助金を見る限り最も新技術の効果が期待されているのは水利施設の設計・構築・運用の適正化と効率化のようです。

尚、この事業に興味を持たれた方は、応募条件があるのでご注意ください。企業等の民間団体の場合、2者以上で研究組織を設け、さらに大学や国立研究開発法人などの研究機関と共同研究を行うという、少なくとも3者が連携した体制が必要です。

ひとつ注目していただきたいのは、農林水産省の公募サイトに平成29年度までに完了したすべての実績について概要書と成果報告書が公開されていることです。応募を検討される方にはとても参考になると思います。

本記事は2019/06/11時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

卓布吹き やがてわれ吹き 扇風機 (星野 立子)

最近のエアコンには、とうとうAI搭載のものが現れ、快適なのかもしれませんが、梅雨入りした休日のふろ上がりなどには、やはり扇風機は手放せません。この句のように扇風機の首振りを追う以外に何も考えない時間は、エアコンでは味わえないように思います。