最大1億円×4年の太陽光発電「周辺」技術開発 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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最大1億円×4年の太陽光発電「周辺」技術開発

2014/11/25

本来であれば平成27年度予算や平成26年度の補正予算が動いて補助金政策の話題が絶えない時期なのですが、ご承知の通りの衆院解散で当面新しい動きは期待できません。補助金のご紹介を目的としている当メルマガにとっては、正直なところネタ探しに苦労しております。

そんな中、NEDOから最近の太陽光発電の動向を示す、少々変わった補助事業「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト」が公募されたのでご紹介します。NEDO負担額(2/3)上限が最高で年1億円・最長期間4年という、結構力が入った事業です。

NEDOはこれまで日本の太陽光発電の技術開発を主導してきたという経緯があるので、NEDOの事業といえば太陽電池セル本体の効率向上が中心でした。従って基礎技術面では大学か大企業の研究開発部門、製品化の面では大メーカーの製造技術が支援対象となり、いわゆる中小企業や建設関連業界は対象外でした。

ところが今回の公募事業で技術開発の対象となるのは、太陽光パネルのパワーコンディショナや架台等の周辺機器、及びシステム維持管理技術つまりメンテナンス技術の開発であり、セルの改良ではないのです。

これには太陽光発電を取り巻く昨今の経済状況が大きく影響していると思います。そもそも3年前の民主党時代に電力の固定買取制度が始まって以来、業界全体の動きは大きく変わりました。

以前は太陽光をどれだけ電力に変えられるかという効率向上が課題であったのもが、どれだけ安く生産できるかという生産コスト競争になりました。

そこに国を上げたダンピングともいえる体制で参入してきた中国メーカーによる価格破壊が起こり、すでに日本の太陽電池のセルメーカーはほぼ市場から撤退したといってよい状況です。ご存じの通り今ではさらに事態は進んで、供給過剰による給電系統の不安定を理由に一部の電力会社が買取を延期するという状況になっています。

来年度予算が止まり、今年の予算消化だけが残っているはずのこの時期、恐らくNEDOで確保していた太陽光発電のための技術開発予算については、周辺機器やメンテナンスに関する技術開発を支援の対象にするしかなかったのでしょう。

ただ、おかげで太陽電池本体の技術には手の出しようがない中小の周辺機器メーカーや建設機材メーカーの出番となります。既に太陽電池の受光面を常に太陽に向ける追尾装置や、集光量を増やすフレネルレンズ等、日本の中小企業が得意とするアイデアはいくつも生まれています。

NEDOにとっては苦し紛れのアイデアなのかも知れませんが、太陽光パネルの設置工事や維持管理等、利益率が低いと考えられていた分野が技術開発の対象となったという事になります。

いっとき足踏みしているとはいえ、世界的にはこれからも普及が見込める太陽光発電に関して、海外でも通用するような周辺技術が生まれるきっかけになれば面白いと思いました。

本記事は2014/11/25時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

木も草も いつか従い 山眠る (桂 信子)

「山眠る」という季語は、多忙で少々疲れがたまっているときに出会うと、ほっと肩の力を抜いてくれる言葉です。特にこの句は自身が木や草の同類となって、毒気が抜けていくような気持になります。