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NEDOの委託事業から見る日本のロボット政策

2014/12/08

今年のメルマガも残すところあと1回となりましたが、衆議院選挙の真っただ中のこの時期、相変わらず今年度の補正予算や来年度予算による補助金の動きは固まっています。そんな中、ご紹介できるニュースは無いかとあれこれ探していると、5日公開のNEDOの委託事業(100%NEDO負担の支援事業)で興味を引く記事を見つけました。

「環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト/ロボット分野の国際研究開発・実証事業/ 産業用ロボットシステムに係る研究開発(フランス)」というとてもとても長い事業名です。

この事業は公募要領を読むとかなり「変な」事業で、委託費の上限も研究開発期間も一応記載されているのですが、共に「相手国との協議により変動することがあり」とコメントがついています。相手国とはフランスですが、他の部分にも同様な注記が散見され、フランスとの間で詳細は何も決められていない状況で公募に踏み切ったような印象です。

公募要領や基本計画を読んでみるとフランス側の事情が説明されています。要約すると「2013年の『フランス・ロボティクス振興計画』でロボット技術は将来大きな市場性があるが、ヨーロッパではその市場に対応する製品開発体制が整っていない」とされており、ロボット技術で世界をリードする日本としては、フランスに協力してかの国の市場育成を応援しようという事のようです。

基本計画には「我が国のロボットシステムの普及や国際的な地歩の確立等を目指す」との文章もあり、なるほど、日本製ロボットの国際標準化が目当てかと思いました。

「ガラケー」のことばからもわかる通り、多くの分野で国際的にも最先端の技術でありながら、世界標準となれずに利益を逸してきた日本としては、日本のロボット技術だけは世界標準の位置につけ、21世紀のドル箱産業にしたいという事でしょう。

恐らく過去の反省から、単独で日本のロボット技術の標準化を画策するより、研究開発体制と生産体制の強化が急務と認識しているフランスと肩を組んで国際的な影響力を強化し、両者のこの分野での共存共栄を目指すという思惑なのでしょう。

事業の正式名称には「研究開発」が3つも含まれていますが、公募要領を読む限り「研究開発」というより「調査」が主である印象で、かなりあいまいです。この公募要領だけ読んで応募しようとされる方はあまりおられないと思いますが、フランスのどこかの研究開発機関と既に関係ができていることが条件であることから考えれば、恐らく公募前から候補者が存在すると思われます。

従って今回初めて公募を知った方にとっては検討対象にはならないかもしれませんが、我が国のロボット技術で国際的な地位の確保を目指す動きが垣間見えて面白いと思いました。

 

本記事は2014/12/08時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

満月の 冴えてみちびく家路あり (飯田龍太)

この時期、東京は晴れ上がって木枯らし冷たく、夜など北に向かう自転車にはつらいですが、満月でなくとも頭上にある冴え冴えとした月には少し元気をもらいます。