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若手研究者のアイディア求む 「未踏チャレンジ2050」

2017/06/26

今回はNEDOによる「未踏チャレンジ2050」をご紹介します。これは政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」に基づく「エネルギー・環境新技術先導プログラム」の一環です。今年度から追加された2つ目の委託事業(100%NEDO負担)となります。

従来から行われているもう一方の委託事業は、ややこしいですが、プログラム名と同じ「エネルギー・環境新技術先導プログラム」(以下「エネ・環」)としてすでに4月に結果が公開されており、現在は2つ目の「未踏チャレンジ2050」(以下「未踏2050」)が公募中です。

少しだけ背景を説明します。COP21で言及された温暖化の「2℃目標」の実現のためには、世界の温室効果ガス排出量を2050年までに240億トン程度に抑える必要があるとされていますが、各国の約束草案の数字を積上げると、2030年に570億トンとなってしまうようです。

つまり全世界では300億トン以上の追加削減が必要となるため、日本政府としては「エネルギー・環境イノベーション戦略」を推進することで世界に貢献したと考え、その仕掛けの一つとして「エネルギー・環境新技術先導プログラム」を動かしているというわけです。

因みに、先に公募が終わっている「エネ・環」は今年で3回目ですが、今回の「未踏2050」はそれと比較して面白いところがいくつかあります。

まず「エネ・環」の事業期間と委託費上限は原則1年間で1億円。2030年代以降に実用化が見込まれる技術がテーマですが、「未踏2050」の上限額は5年間で毎年2000万円2050年代の普及を目指す技術課題がテーマです。

明らかに「未踏2050」ではこれまでにない新しいアイデアを基礎研究のフェーズからじっくり練り上げて欲しいとの意図が見えます。

次に、年齢制限。「エネ・環」も「未踏2050」も産学連携が条件ですが、「未踏2050」については大学等から参加する研究者に40歳未満という条件が付いています。2030年代でも現役で活動しているはずの現若手に、「責任とってね!」ということでしょうか?

さらに、「未踏2050」公募要領の別添にリストアップされている「対象研究分野と技術課題例」がユニークなことを挙げておきます。

「次世代パワーエレクトロニクス」をはじめとする4つの技術分野だけは一般的ですが、各技術分野に6,7件挙げてある技術課題例には、かなりターゲットを絞り込んだ、専門性の高い内容が示されています。

あえて分かり難い例を一つだけ挙げます。分野番号B:エネルギー・システム対応センシング技術の技術課題例4です。

「バイオミメティックなセンサ(アクチュエータ、センサ情報処理含む)に関する課題」

専門外の身としては、バイオミメティックが生物の機能を分析・応用する生物工学に関する課題らしいことだけはわかりますが、その「センサ(アクチュエータ、センサ情報処理含む)」となると具体的な内容はまったく想像がつきません。

技術課題の設定については「示されている課題例はあくまで参考であり同じ課題を設定する必要なし」と説明がされているのであなたの研究内容が重なる課題例が一つもないとしてもがっかりする必要はないと思います。

しかし、これはNEDOが100%費用を負担する委託事業なので、もし26例示された課題例の中に偶然にもあなたの研究内容に近いものがあれば、採択される可能性は高まるでしょう。運試しのつもりで公募要領別添1の「技術課題例」に目を通してみてください。

本記事は2017/06/26時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

もりもりもりあがる雲へ歩む  (種田 山頭火)

久しぶりの山頭火です。夏の句としては「分け入っても分け入っても青い山」が有名ですが、夏至を過ぎ、梅雨明けを待つ今の時期に思い浮かぶ夏のイメージは入道雲です。