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補助金が、事業承継の足掛かりに

2019/07/08

事業継承補助金の第2次公募が始まりました。経済産業省の中小企業政策で現在最も重視されている「後継者不在による優良企業の廃業」問題への打開策です。

「平成30年度第2次補正」ですが、前回の第1次公募から申し込み方法が大胆に変わっています。第1次公募ではタイミングが合わずご紹介できませんでしたが、受付が原則電子申請のみとなりました。

事務局側が準備した応募サイトから必要情報を入力することで交付申請書を自動生成する方式であり、納税証明書や株主名簿、経営革新等支援機関の確認書等々の添付資料も、すべてPDFをアップロードするという、100%電子化です。

この手法は先にIT導入補助金でも採用されていますが、応募申請のための入力マニュアルを見たところ、かなり使い勝手が改善しているように思われます。

この補助金は大きく分けて経営者の交代を対象とするI型と、M&Aを含む事業再編・事業統合等を対象とするII型の二つがあり、これによって補助金の上限が異なりますが、実際には承継者及び被承継者が法人か個人事業主かによって11もの類型に分かれます。

これを見極めるために公募申請に示された条件を詳細に検討して判断するのはかなり骨が折れるのですが、前回から設けられた申請サイトでは入力の第一歩として、3、4つの簡単な設問に答えるだけで自動的に申請類型が分かる仕掛けになっています。

そして、前述の通り、入力マニュアルが中々わかりやすくできていて、IT導入補助金と比べてもこちらの方が優れていると感じます(ただしIT導入補助金はスマホ用の申し込みサイトも備えていて、この点だけはパソコン用サイトのみの事業継承補助金に勝っています)。

といっても、普段パソコンやインターネットに触れていない人には電子申請は難しいと思います。見方を変えれば、この程度のITリテラシーをもっていることが、経営革新に取り組んだ上で獲得する事業承継補助金への応募条件と、経済産業省は考えたのでしょう。

さて、第2次公募の開始日である7月5日付で、第1次公募の採択者が発表されました。それによるとI型の採択数は523、応募数710で採択率75%、II型は同じく109の204で採択率53%。どちらもかなり高い採択率です。

では第2次公募の採択率はどうなるでしょうか?

それを占う大きな要素の一つは総額予算の残りです。これが少なければ競争率はぐっと高まります。経済産業省の公開情報では総額予算は50億円となっています。

仮にI型の平均補助金額を300万円、II型のそれを500万円として計算すると、第1次公募での支出は約25億円となり、まだ半分残っていることになります。

これはかなり大雑把な計算ですが、仮に5億円前後の幅で誤差があったとしても20億~30億円ということになるので、第2次公募の倍率が第1次公募の何倍も高くなると考える必要はなさそうです。

ところで、一般的には事業承継とは本来「現経営者」が抱える大問題ですが、この補助金はその現経営者から経営のすべてまたは一部を引継ぐ「承継者」が申請者となる支援事業です。

現経営者として事業承継問題を言い出すタイミングがつかめずに困っている方を大勢知っています。もしかしたらこの事業の公募要領を、後継者と見込んでいる人に渡すことで、良いきっかけが生まれるかもしれませんね。

本記事は2019/07/08時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

うれしさや七夕竹の中を行く (正岡 子規)

きっとこの七夕竹の林は街中での七夕まつりであり、子供たちの願いの短冊が飾られているのではないかと想像します。病臥に伏せる前の子規が無邪気に喜んでいる姿が目に浮かびます。なお、俳句の世界では七夕はまだ旧暦扱いで秋の季語です。そろそろ夏の季語に変わっても良い頃ではないでしょうか?