上限2000万円前払いの「頑固な助成金」
今回は久々に新技術開発財団の「新技術開発助成」を解説します。今回は第94回ですが、前回は2011年の第87回募集の際に取り上げて以来です。前回も触れましたが、相変わらず毎年4月と10月の2回、確実に公募回数を積み上げています。
この助成金は大変人気があるのですが、その理由の筆頭は助成金の前払いです。政府系の助成金はすべての計画が終わってお金を使った後でなければ戻ってこないので、採択されても必要な事業費のすべてを自己調達する必要がありますが、こちらで必要な自己資金は開発費全体の1/3で足りることになります。
政府系の補助事業が後払いである理由は、「政府が税金からお金を払うのには根拠がいる」の一点です。採択された時点では、政府側にはこれから行う研究開発などの計画しか手元になく、これは根拠になりません。
実際にお金を使って計画を進め、その成果物と支払った金額を証する帳票類を示してやっと根拠と認められるのです。その段取りを踏まないと今度は政府が国民から追及されるというわけです。
もちろん新技術開発財団は市村清氏の「三愛精神」に基づく歴史ある公益法人であり、不正を許すことはできませんが、なぜ「新技術助成開発助成」で前払いができるのかというと、渡した助成金で何が起きても、自らの責任の範囲ですべて処理できるからです。
ただ、この助成事業の人気の理由は他にもあります。確実な公募スケジュールの維持に加え、助成の目的についても、「国産の独創的な新技術の実用化」という主旨を頑固に貫いており、応募する側の立場ではたとえ不採択となっても計画的に次回のチャレンジの準備ができることになります。
とくに徹底しているのはその対象技術の内容であり、
- 国内で特許申請した技術に基づくこと
- 実用化開発であり、原理確認のための試作や商品設計段階の試作は対象外とする
これについては最近の経産省系のものづくり系の補助事業のように公募の度に対象や評価基準が微妙に変化しているのと比べると「ごりっぱ」と言いたくなります。
もっとも申請方法だけは今年になって電子申請を取り入れ、ウェブページへの登録及びウェブページからの申請書類提出が必要となりました。
残念ながら申請書類は2部のコピーと共に紙の状態でも郵送する必要もあるため、今のところウェブ入力の手間が増えた形になっていますが、何年経っても電子データと紙の2重申請が必要なNEDOなどと異なり、近いうちに電子申請に一本化されるものと期待します。
さらに、応募するにあたって過去の事業内容に関する情報が豊富な点も評価しています。過去3年間の助成実績についてのすべての事業概要が公開されていたり、完了した事業者への訪問レポートや過去10年間の採択案件が一覧表にされていたりとサービス満点です。
何れにしろ、スケジュールと評価基準が明確な助成事業なので何回かの応募で内容を充実させてきた応募者が多くいると思われます。チャレンジされる方は事業実績等を参照しつつ、しっかりと公募要領や読み込んで、少しでも評価が高まるように文章を磨いてください。
季節の俳句
大いなるものがすぎゆく 野分かな (高濱 虚子)
この野分(台風)は絶対に風台風であったと思います。初めてこの句を見た時も「大いなるもの」は森の大木を翻弄する強風の印象でした。でも最近の若い人は「ゲリラ豪雨」を連想するかもしれませんね。
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