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始まった医療関連補助金の集約

2015/02/02

経済産業省による「医工連携事業化推進事業」の公募が始まっていますが、その公募要領を見ると日本版NIHと呼ばれる「日本医療研究開発機構(AMED)」を中核とした日本の医療研究開発予算の再編成が、「いよいよ本当に動き出すんだなぁ」という実感を覚えます。

というのも、この委託事業の公募自体はこれまで経済産業省で医療機器開発の予算を担当している「医療・福祉機器産業室」、通称「医・福」によって行われていますが、その概要には、「採択された申請課題については、平成27年4月1日以降にAMEDとの間で委託契約を締結する」とされています。

医療機器及びその周辺機器に対して4千万円から8千万円の開発費を100%負担するこの事業について、募集と審査は経済産業省が行うけれど、採択された事業の資金は4月1日に正式発足する内閣直属のAMEDから提供されることになります。

厚生労働省、文部科学省、経済産業省等に分散されていた医療関連の開発予算を、米国にならって技術の集約と開発予算の効率化のために一元化するという、いわゆる日本版NIH構想は、これまで各省間の調整が進まず長く実現できませんでした。

しかし、医療技術の国際競争力強化がアベノミクスの柱の一つとなったことから、昨年5月に安倍内閣の強力な指導により根拠法である「健康・医療戦略推進法」他が法制化され、1年近い準備期間を経て来る4月に運用開始となったのです。

AMEDについては各省により今回も骨抜きにされたとの一部報道もありますが、現実に関連各省から人の移動も行われ、この事業のように予算執行が明示されると、日本全体の医療技術開発に関する莫大な予算の流れが変わることが実感されます。

ただ、少々気になるのが「コンソーシアムでの応募」を条件としている今回の「医工連携事業化推進事業」の応募条件です。一応「ものづくり中小企業」がコンソーシアムの必須メンバーの筆頭に挙げられているものの、応募の条件となっている他のメンバーをそろえるのが結構大変かもしれません。

まず医療機器の製造販売ライセンスを持つ「製造販売担当企業」。これは大量生産能力及びその製造物責任まで担うので中小企業では無理で、実績のある大企業の参加が必要です。次に実際に治療を行う「医療機関」、最後にファイナンスの管理責任を担う「事業管理機関」

つまり、ものづくり中小企業を含めたこれら4者すべてを含むコンソーシアムを構築して臨まなければなりません。

そもそも「日本のものづくり中小企業の技術で国際競争力のある医療機器を開発する」といのが本来の趣旨ですが、持てる技術でこれから医療分野に新規参入したいという方は、いま少しこの新しい予算の流れを観察する時期かもしれません。

本記事は2015/02/02時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

勇気こそ 地の塩なれや 梅真白 (中村 草田男)

読んだ方もおられるかと思いますが、勇気ある報道活動の果てに逝かれた後藤健二さんを悼む、読売新聞のコラムに添えられた句です。合掌。