医療系予算1千億円を一元に ― 日本版NIH本格稼働
4月に設立した日本版NIH、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)がいよいよ本格的に動き出したようです。「先端計測分析技術・機器開発プログラム」の公募が始まりました。
医療機器開発予算の一部の21.7億円が充てられるとのこと。
NIH(米国立衛生研究所)は米国でのライフサイエンス関連の予算を一元的に管理している組織で、医療技術と予算の集約で大きな成果を上げていると評価されています。日本でもこれにならって、医療関連予算を一元的に管理する組織を構築しました。
これまで厚生労働省、文部科学省、経済産業省が独自に予算要求しその執行を担ってきた医療関連予算は研究テーマの重複など縦割り行政の弊害が指摘され、日本版NIHの必要性が古くから叫ばれていたのです。
現政権でアベノミクスの成長戦略の一環として、「医薬品・医療機器を戦略産業化」が掲げられ、長年の省間の軋轢と抵抗を弾き飛ばしてこの4月に実現したのがAMEDです。医療系予算が「オールジャパン」の掛け声の下に集められ、1,284億円を確保したようです。
前置きが長くなりましたが、ご紹介する「先端計測分析技術・機器開発プログラム」は、事業構成に新しい試みが見られます。先ず開発目標の類型が2×2のマトリクスになっていること。この辺は「助成金のページを見てもらうとして、おもしろいのは開発期間と予算の関係です。
タイプによって開発期間が2種類あります。通常は期日の指定で示される事業期間が、経過時間で示されているのです。短い「要素技術の開発(L1)」では2年4ヵ月、長い方の「先端機器開発(L2)」では3年4ヵ月と書かれています。
政府の予算では必ず毎年3月末で年度締めを行わなければいけないので、必然的に期日指定で開始・完了を決めないと決済できないのですが、「始まってから2年4ヵ月」という決め方は政府の決算から自由であることを示しています。
さらに事業予算の書き方が「要素技術の開発(L1)」が2千万円/12ヵ月、「先端機器開発(L2)」は5千万円/12ヵ月となっており、もし開発期間が短ければ月数に比例して予算も低減する表現になっています。
実は今回の公募がAMED事業の最初ではなく、5月から2件の開発支援事業が公募されていたのですが、今回の「先端計測分析技術・機器開発プログラム」がAMEDの「本格稼働」と感じるのは、上記のように制度設計がかなり稀であることと、さらに今回の公募要領で初めて、AMEDが目指す「オールジャパンでの医療機器開発」についての背景説明と共に、27年度に予定されている医療機器開発の関連事業が予算付で記載されていることによります。
それによると、既に公募中で6月10日締め切りの「ロボット介護」(予算25.5億円)に加え、「未来医療のための医療機器・システム」(同41.5億円)、「医工連携」(同21.3億円)等をテーマとした研究開発支援事業が予定されているようです。
実は、AMEDは設立されたものの、体制固めが遅れて公募事業が遅れるのではという観測があり心配していたのですが、今回の公募内容を見て「取りあえず始まったか」と一安心しています。「ライフイノベーション」分野の方にはチャンスかと思います。
季節の俳句
かたまりて黄なる花咲く夏野かな (正岡 子規)
仕事で訪れた松山郊外を移動中、畑の向こうの黄色い花の群れが目に留まりました。春は桜、秋は萩など季節を代表する色のイメージは浮かびますが、「夏の黄」と言われれば納得します。ただし真夏ではなく、梅雨直前の夏を感じさせるこの季節限定ですが。
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