年頭ご挨拶に代えて~平成31年度予算を読む - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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年頭ご挨拶に代えて~平成31年度予算を読む

2019/01/07

当ブログをご覧の皆さま

新年あけましておめでとうございます。

昨年末12月21日の閣議決定を受けて、経済産業省から「平成31年度経済産業省関連予算等の概要」が公開されました。まだ国会の承認前ですが、今年の中小企業支援策の動向がわかるので、年頭のご挨拶代わりにアライブビジネス流の解説をお届けします。

まず中小企業向け予算総額が3,851億円と、昨年度の3,086億円から大きく伸びました。尚、これは平成31年度の当初予算1,117億円と平成30年度の補正予算2,634億円の合計となります。

補正予算の方が当初予算を大幅に上回っていて、これはここ何年来の傾向なのですが、平成30年度の当初1,110億円+補正1,976億円と比べても、平成31年度は特にその傾向が強く出ています。その理由については後ほど。

中小企業向け予算の最大の目玉は、平成30年度第2次補正予算による「中小企業生産性革命推進事業」の1,100億円です。これは、ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者支援で構成されるのですが、今の時点ではまだ各補助金の内訳が発表されていません。

ただし、ものづくり補助金については12月28日付けで平成30年度補正分の運営事務局の募集が始まっており、その公募要領によると総額予算が800億円とのこと。これに、前にお伝えしたIT導入補助金200億円という予想から、残りの100億円程度が小規模事業者支援と考えられます。

さらにものづくり補助金については、上記運営事務局の公募要領に「先端設備導入計画」または「経営革新計画」の申請が補助率向上の条件とされ、加えて従来通り審査での加点要素にもなると考えられるので、どちらかがない場合、壁はかなり高くなると思われます。

またIT導入補助金については1件当たりの上限額がこれまでの50万円から450万円へと大幅に増額されます。補助率1/2なので、事業計画的には900万円のIT化を想定しているので、かなり大掛かりな業務システムの導入にも対応できることになります。

次に産学連携による研究開発を、最長3年間で1億円近い規模で支援する、「戦略的基盤技術高度化事業(サポイン)」の動向について。

この事業は昨年の平成30年度から予算枠が「地域未来投資促進事業」とされ、応募資格が従来の「ものづくり基盤技術」にかかる計画認定に加えて「地域経済牽引事業計画」の認定が追加されました。

さてこの「地域経済牽引事業計画」とは何か?実は昨年中はあまり情報がなく、認定を獲得する条件がよくわからなかったのですが、最近その全貌がようやく姿を現しました。

クリアするには地域からの推薦というこれまでにない関門が設けられているのですが、事業計画の認定には補助金だけでなく税制優遇や規制緩和などの支援が含まれ、少し複雑な仕組みになっています。その詳細についてはまた別の機会にご紹介します。

続いて研究開発型ベンチャーの育成を目的とした「スタートアップ支援」について。これについてはコンセプトが「J-Startup」という形で整理されたようで、経済産業省、NEDO及びJETROの三者が共同でウェブページを立ち上げています。

「J-Startup」は、政府主導でベンチャーを育てる仕組みである「ベンチャーエコシステム」を構築し、「ユニコーンベンチャー」(遅くとも創業10年以内に売上高が数100億円に成長する可能性のあるベンチャー)を次々と生み出すことを目指す試みです。

以上が主な事業ですが、他にもいくつか注目したい補助金事業があります。

AMEDとの連携で先進的医療機器・システム等の開発を支援する「先進的医療機器・システム等技術開発事業」や、世界最先端の挑戦的研究揮発を推進する「ムーンショット型研究開発事業」などは、技術開発力ある中小企業にとってはチャンスとなる事業です。

また少々ニッチではありますが、エネルギー・環境分野の中長期的課題に挑戦する「新技術先導研究プログラム」や、ロボット介護機器の実装を目指す「ロボット介護機器・福祉用具開発標準化事業」なども、関連する分野に関わる企業は見逃せません。

他にも「国内・海外販路開拓強化支援事業」、「地域活性化支援事業」、「コンテンツグローバル需要創出事業」他、中小企業の海外ブランドの確立、海外情報の収集、和製コンテンツの海外展開等を支援する一連の事業群があります。

最後に、今年が最後となる「消費税軽減税率対策事業」を忘れてはいけません。10月の消費税アップに伴う軽減税率導入への対応に必要となる、レジや受発注システムの改修・入れ替えを支援する事業なので、関係する方は多いと思います。

そしてそのための予算として総額561億円が平成30年度の補正予算に含まれており、これがはじめにお伝えした平成30年度補正予算が膨れ上がった大きな要因のひとつとなっています。

以上のように平成31年度の中小企業支援事業は盛沢山なので、いつもより少し字数が多くなりました。御社の事業展開に関係する分野は含まれているでしょうか?個別の事業の詳細については、わかり次第逐次お知らせしますので、是非ご期待ください。

本記事は2019/01/07時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

初富士の見ゆる地に住みめでたけれ (能村 登四郎)

手放しの富士礼賛ですが、よくわかります。ビルの高層化により武蔵野の地から富士山が遠望できる場所は今やとても貴重で、通勤路では2か所のみです。さらに好天に恵まれる機会も年に数回しかないのですが、だからこそ「見ゆる地にすむめでたさ」には感謝です。