中小企業×大学の補助金
今や文部科学省予算としては唯一といえる中小企業向け補助金、A-STEPのNexTEP-Bの公募が始まりました。
企業向けのNexTEPには、もうひとつAタイプがありますが、今回公募が始まったのは上限額が少ない方のBタイプです。
少ないといっても最長5年間で3億円なので、例えばものづくり補助金の1,000万円と比べれば桁違いです。因みにAタイプは上限15億円と莫大ですが、実は開発が「成功」と評価された場合その後の10年以内に全額返却しないといけないので補助金と言えるかどうか疑問です。
面白いのはAタイプの支援を受けた開発が「失敗」と評価された場合、返却額が10%に減額されることで、この辺りどのように考えるか微妙なところなのですが、それはまた公募が始まった際に解説します。
さてBタイプですが、中小企業が対象と言っても、応募できる計画が「大学等の研究成果に基づく技術シーズの実用化開発」となっているので、中小企業単独では応募できず、大学が持つ特許技術の製品化に向けて、中小企業が参加するというスキームが必要です。
また運営機関である科学技術振興機構(JST)の長年のやり方で、補助金ではいわゆる補助率に該当する「マッチングファンドの比率」という表現があります。JSTが実施企業が負担する研究開発費の2倍を負担するという言い方です。
つまり研究開発費全額の2/3をJSTが負担するということになりますが、補助金の補助率と大きく異なるのは、その2/3については補助金ではなくJST負担100%の「委託費」となるため、消費税も対象となる点です。この違いは消費税が上がる今となってはかなり大きい。
もう一つJSTで特徴的な概念に「実施料」があります。NexTEP-Bによる製品化が成功し、その後の「利益」があがったら、その中から一定の額をJSTと特許権者である大学に支払わなといけないという仕組みです。
一般的に返さなくてよいといわれている補助金にも、事業によっては「収益納付」というルールが適用されることがあります。補助金によって購入した設備や開発した製品で利益があがった場合、その利益から規則で決められた割合を5年間返納するという制度です。
NexTEP-Bの実施料はこれに近い概念ですが、「売上金額に実施料率を掛けた金額を実施料とする」と少し乱暴な言い方をしているので、事業者としては一瞬「赤字でも実施料を支払うのか?」と誤解しがちです。
しかし、「実施料率」のなかに原価と販管費が織り込まれており、営業利益がプラスの年度のみ、その一部を支払うことになるので、事業者からJSTに対する実施料の支払いは補助金の収益納付とほぼ同じです。
「実施料」が「収益納付」と異なる点は、事業者が支払う金額を事前にJST、大学、企業の間で合意するという点です。また、特許権者である大学については事業完了後10年間、算定された比率を営業利益に乗じた金額を支払う点も異なっています。
つまり、一般的には特許権者と事業者の間のロイヤリティーは2者間の合意で決められますが、JSTが仲立ちを取る形になっているのです。応募については以上の仕掛けを理解して検討されると良いでしょう。
季節の俳句
美しく彼岸の供花の蝶結び (栗林 清瑠)
我が家にも仏壇があり、毎朝の線香と花の水やりは私の役目ですが、春と秋にお彼岸という季節の区切りがある国に生まれてよかったと思います。俳句で彼岸は春に限るようで、秋は秋彼岸、後彼岸だとか。
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