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変わる、ものづくり補助金

2020/02/03

経済産業省の補助金の中でも目玉である「ものづくり補助金」について、いまや恒例となった「事務局公募」における事業概要の予告が行われました。

これによると、次回の「ものづくり補助金」の正式名は、前回から変更なく令和元年補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」とのこと。しかし内容はびっくりするほど変更点が多いようです。今回は「びっくり度」の高い順に変更点をご紹介します。

  1. 給与支給総額計画不達による補助金返還


    通常、補助金は支払いを受けた後に返却が求められる場合は2つだけです。一つは証憑の偽造や申請書への虚偽記載等、いわゆる不正行為があった場合。もう一つは定められた期間中に一定以上の収益が上がった場合の「収益納付規定」が適用される場合です。

    逆に言えば、売上計画であっても採用計画であっても、申請書に示した計画値の不達成を理由に補助金の返却を求められることはありません。たとえ新製品の商品化が一向に実現しなくとも、理由を聞かれることはあっても補助金の返還請求はされません。

    しかし、次回の「ものづくり補助金」については、努力の如何に関わらず給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標が達成できていない場合、「補助金の一部の返還を求める場合がある」という規定が設けられるようです。

    もちろん返還が免除されるいくつかの条件が付いているので1.5%未満であっても一概に返還を要求されるわけではありませんが、「何とか国内労働者の所得を上げて2%インフレ目標を達成したい」という現政権の思惑が忖度されたのでしょう。


  2. 重複採択に対する減点要件


    これまでは、ものづくり補助金で採択経験がある事業者は、「同一・類似の事業で応募した場合採択しない」という表現で、複数回の採択に一定の歯止めを掛けていました。

    当社も2回目以上の採択をめざすいくつかのご支援先に対して、過去の事業とは全く異なる事業内容であることをアピールする申請書上の表現を意識しましたが、今回は事業内容に一切関係なく「過去3年間に採択された事業者の評価は減点する」と明確です。


  3. 補助対象者の新型


    これまでのものづくり補助金を踏襲する上限額1000万円「一般型」に加え、次回から新たに「グローバル型」「ビジネスモデル構築型」が追加されるとのこと。

    この内「グローバル型」は海外拠点での活動を含む事業の拡大・強化等を目的とした設備投資等が該当し、補助金上限額が3000万円に引き上げられます。

    ただし、「海外拠点での活動」とは何か?海外での設備投資も対象となるか?など詳細はまだわかりません。これまで設備投資の現物確認が完了検査時の原則でしたが、海外での設備投資を対象とできるのでしょうか?かといって対象外ならあまり魅力はありません。

    さらにわからないのは上限1億円で補助率100%「ビジネスモデル構築型」。説明では、中小企業30者以上のビジネスモデル構築・事業計画策定のための面的支援プログラムを補助、とされています。

    例として「面的デジタル化支援、デジタルキャンプ、ロボット導入など」が挙げられていますが、正直言って具体的なイメージがわきません。公募要領を待つしかないようです。


  4. 補助率2/3要件と加点要件


    前回まで、通常の補助率1/2が2/3に上昇するための要件として、主に「先端設備等導入計画の認定」または「経営革新計画の承認」が条件でしたが、次回は「一般型」と「グローバル型」については小模事業者であることが唯一の2/3要件となるようです。

    一方、加点要件についてはこれまでの要素と大きな違いはありませんが対象となる認定計画が経営革新計画一本に絞られ、比較的容易だった「先端設備等導入計画」が削除されたことから、加点を狙う際の応募者の負担は増えそうです。

    また加点対象となる賃上げが、平均給与総額の増加率の場合、「1%」から「2%または3%以上」に引き上げられました。他に地域の最低賃金+60円以上のまたは+90円の時給とする計画や、被保険者の適用拡大などを選択することも可能なようです。




以上の他にも、応募方法を3ヶ月程度に1回ずつ締め切って採択発表するなどの手順の変更があるようですが、応募される場合は加点要件の経営革新計画の承認取得及び賃上げ計画の選定が鍵となりそうです。

いずれも時間が必要と思われるので、「一般型」と「グローバル型」に応募される場合は、今から社内で準備を始めると良いでしょう。

本記事は2020/02/03時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

風花を 美しと見て 憂しとみて (星野 立子)

人生訓という意味ではなく心持ちとして、一つのものに両面を同時に、あるいは連続して味合うことがあります。この両面性を表すのに「風花」という雪の姿を選んだのは的確で、その使い方のうまさに惹かれました。