生産、流通の設備投資の大型支援策 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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生産、流通の設備投資の大型支援策

2020/06/08

現在、新型コロナ感染症対策のための第2次補正予算案が国会で審議中ですが、経済産業省が公開しているPR資料でその概要を見ることができます。

その2本柱は、政府・民間の金融機関経由で供給される10兆円を超える資金繰り融資枠の確保と、持続化給付金の追加や家賃保証など計約4兆円の中小企業向緊急支援のようです。これらを一言でいえば中小企業、小規模事業者の倒産防止です。

一方、すでに動き出している第1次補正予算には、もちろん持続化給付金は含まれているものの、雇用調整助成金の拡張といった労働者の保護と、将来の観光業復興を目指すGo Toキャンペーンに代表されるコロナ後の景気回復策が中心でした。

どうやら、安倍政権は、当初コロナ後の景気回復策と当面の労働者の生活の維持は思いついたものの、日を追うごとに消滅していきつつある中小・小規模事業者の切迫状態には気が付かなかったようで、第1次補正発表後のマスメディアの反応を見て軌道修正したように見えます。

ということで、前置きが長くなりましたが、第1次補正予算の目玉の一つである「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が動き出したのでご紹介します。対象は大企業を含めたすべての国内企業とNPOなどです。

この事業は明らかに将来の景気回復を目的とした事業で、つい先日までのマスク不足で代表される緊急物資の供給不足という、サプライチェーンの脆弱性を排除することを目的とした設備投資を支援する事業です。

大企業も対象になっていることから、補助金の総予算2200億円、1件当たりの上限額がなんと150億円という、一般企業向けの「補助金」事業としてはこれまでの最高額となると思います。

また通常、経済産業省の補助金で「設備投資」が対象となる場合、機械設備が中心で建物は対象外ですが、今回は建物も対象となります。これは生産や流通の拠点丸ごとの機能変更や移転まで補助対象としていることを示します。

たとえば重要部品であっても、コスト要素を重視した生産拠点の海外移転により空洞化してしまった日本の製造業の経緯を考えると、今回の新型コロナによりそれを国内に呼び戻すための膨大な予算が確保されたことは、痛烈な皮肉かもしれません。

とは言え、国内外の流通網が棄損されるなどの事態に備えて、海外と国内のサプライチェーンを見直すという視点は企業にとっても悪いことではないでしょう。そのための設備投資が今後の日本の復興に貢献するのであれば、なおさらです。

この事業は、人工呼吸器に代表される「政府が増産や安定供給の要請をしている」サプライチェーンの見直しを行う「B」、それ以外の一般のサプライチェーン見直しを「A」、また「A」を複数の中小企業で行う場合を「C」としています。

「C」については補助率の上限が3/4、「B」の場合は大企業2/3 、中小企業3/4、「A」のそれは大企業1/2 、中小企業2/3とされており、補助率の差によって政府の優先順位が明確に示されています。

150億円という上限額の大きさからさすがに申請書の作成は少々重たいかもしれませんが、逆に公募要領には下限額の記載は在りません。

たとえば数億円程度の規模であっても、サプライチェーンの見直しに該当する業務見直しを検討されているのであれば、この事業の活用についてご一考されるようお勧めします。

本記事は2020/06/08時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

河鹿聞くとて宿の灯を細うせり (上野 燎)

夏の温泉はまずは避暑という意味でありがたいのですが、もう一つ、山深い宿の裏の渓流から聞える河鹿の声が魅力です。日暮れの一時、何とも言えない哀愁を含んだあの声の味わいは捨てがたいものがあります。コロナ禍の今、河鹿の声が聞ける夏が来ることを祈ります。