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中小・ベンチャー、ロボット産業参入にチャンス

2020/07/06

今回はNEDOによる「革新的ロボット研究開発基盤構築事業」をご紹介します。
昨今では「ロボット」といえばAIを搭載した人型ロボットを想像しますが、この事業では、すでに生産現場に大量に普及している産業用ロボットを対象としています。

今年度から2024年度までの期間限定であり、かつ1件当たりの最長事業期間が5年という長丁場です。ただし、単年度の予算総額は2.5億円とそれほど大きくないので「細く長く」というのが特徴のようです。また、応募条件に中小企業の限定は無く、事業期間終了後直ちに事業化が可能な計画を求めています。

従って、一見するとファナックや安川電機等の産業ロボットの老舗大手メーカーの研究開発部門を対象とした支援事業に思われますが、よく見るとそうではないようです。それは公募要領の事業目的に記載されているキーワードに見て取れます。

即ち、


「産業用ロボットの市場は拡大が見込まれている」が、「中国や欧州の追い上げ」による低価格化が進み「極めて厳しい競争環境」にさらされ、かつて「世界シェアトップだった日本は2017年以降中国にその地位を奪われ」てしまった。

今後、世界市場でのかつての地位を取り戻すためには、「既存技術の改良・改善のアプローチのみならず、サイエンスの領域に立ち返った技術開発や、異分野の技術シーズの取り込み等によるイノベーションの創出」が重要である。

にもかかわらず、現状では「日本の産業用ロボットメーカには、ロボットのみを手掛ける企業はなく、数多くあるセグメントの一つがロボット分野となっている」ことから「基礎・応用研究に割くリソースは極めて限定的」である。

そこで、本事業により国が関与することで「これまで直接関わることの少なかった、ロボティクスとは異なる分野も含めた幅広い大学研究者等との連携を図りつつ」、「産業界における協調領域において検討を進めながら研究開発を実施する」

という訳です。

従って、これまで産業用ロボットに関わってこなかった中小企業であっても分野によっては十分この事業に応募することは可能かと思われます。

具体的な課題を見てみましょう。公募要領には次の4つの開発項目が記載されています。
  • 研究開発項目〔1〕「汎用動作計画技術」
  • 研究開発項目〔2〕「ハンドリング関連技術」
  • 研究開発項目〔3〕「遠隔制御技術」
  • 研究開発項目〔4〕「ロボット新素材技術」
長文になってしまうので、各々の詳細は示しませんが、〔1〕「汎用動作計画技術」と〔2〕「ハンドリング関連技術」については老舗の大手プレーヤーにお任せしておけば良さそうです。

異分野の中小企業からの参入が期待されるのは、まず〔3〕「遠隔制御技術」。従来は動作の遅延を避けるために工場内を有線で繋がれていたロボットを5Gで繋ごうという課題であり、通信技術分野で革新的な技術を持つベンチャーなどは大きな可能性があるでしょう。

また〔4〕「ロボット新素材技術」では「重要部品の新素材代替による軽量化」というシンプルな目標が含まれているため、強くて軽い新素材を持っている中小企業などはチャンスではないでしょうか?

なお、個別の開発項目の詳細については「基本計画」の中で説明されているのでこちらを参照願います。

全体としては、徹底した低価格化で日本の市場を奪った中国への対抗策は既存の大手プレーヤーにお任せして、欧州の「技術クラスター」の動きに対応した産学連携による新たな技術の応用場面での、中小やベンチャー企業の活躍が期待されているのです。

5Gや新素材の分野でとんがった技術を持っておられるベンチャーや研究開発型の企業の方は一度公募要領をご確認ください。

本記事は2020/07/06時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

豪雨止み山の裏まで星月夜 (岡田 日郎)

作者は1932年生まれとのことですが、それよりかなり若い私自身の記憶でも、少々激しい「豪雨」であっても「止めば星月夜」という描写に納得します。
昨今は「止んでも家ごと流され」ということになってしまい、俳句にもなりません。ついに「季語」が消滅の危機を迎えているのでしょうか?