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対象は中小・ベンチャーのみ、省エネ事業

2020/08/03

今回は、前回に続きNEDOの助成事業のご紹介となりますが、NEDOとしては珍しくコロナ対策の色が濃い内容となっています。事業名は「戦略的省エネルギー技術革新プログラム基本スキーム」緊急追加公募となります。

この事業自体は2011年度から行なわれている事業です。今回は「緊急追加」としていますが、3月16日締切の第1回公募が行われたので回数としては2回目となります。ただし、内容はかなり絞り込まれています。

実はここ数年、春と夏の2回公募が行われ、内容的には同じなのでもしかしたら今回とは別に、さらに通常の「2回目の公募」が行われるかもしれません。この事業の目玉は、大企業も対象とした最大上限額年間10億円という大型予算なのです。

そこで、今回の緊急追加公募の説明に移る前に、簡単に従来の事業の概要を解説します。まず事業の目的は、「省エネルギー」即ち現在消費されている化石燃料の消費量の抑制であり、2030年度における原油換算した化石燃料の、10万kLの削減が1件当たりの目標です。

ただし、その実現方法についてはNEDOからかなり具体的な「重要技術」とその課題が提示されています。この選出に当たっては化石燃料の削減手段に関する政府のこれまでの検討結果が反映されているようです。

その「重要技術」に係る課題リストはA4で4ページに及ぶのでとてもすべては引用できませんが、各分野の筆頭に挙げられている内容だけ列記します。相当の検討が行われた雰囲気を感じていただけるでしょうか?

  • エネルギー転換・供給部門では「高効率電力供給」として、柔軟性を確保した系統側高効率発電、及び業務用・産業用高効率発電他

  • 産業部門では「製造プロセス省エネ化」として、革新的化学品製造プロセス、革新的製鉄プロセス他

  • 家庭・業務部門では「ZEB/ZEH・LCCM住宅」として、高性能ファサード技術、高効率空調技術他

以上が通常公募の概要となります。これを踏まえて、今回の緊急追加公募の特徴の「絞り込み」ですが、具体的には、

  1. 通常はインキュベーション研究開発フェーズ、実用化開発フェーズ、実証開発フェーズの3つのフェーズから、今回は実用化開発フェーズのみが対象
  2. 事業対象から大企業が除外され、中小企業に限定助成率も2/3の一本、上限額は最大年間2億円

    とされています。

    さらに内容も、従来の実用化開発フェーズとくらべて次のような違いがあります。

  3. 省エネルギー効果量目標の縮小
    従来:2030年度時点で原油換算率10万kL/年以上の省エネ効果
    今回:同、5万kL/年以上の省エネ効果
  4. 対象事業の違い
    従来:既に企業や大学等が有している技術やノウハウ等をベースとして、省エネルギーに資する応用・転用を図る技術開発
    今回:上記の内、コロナショック後の社会変化に資する省エネルギー技術

3.の省エネルギー効果量目標はこの事業のコア目的なのは明らかですが、それを半減させたというのは対象を中小企業に限定したことと連動していると考えられます。

即ち、従来の選考基準では、省エネルギー効果が大きい大規模事業が優先的に採択されることから過去の採択事業者はその殆どが大企業であり、投資能力で劣る中小企業は不利な戦いを余儀なくされていました。

そこで、今回は対象を中小企業に限定し、2030年度の化石燃料削減目標も半分に縮小して中小企業の参加を促すことで、大企業より大きなコロナショックを受けていると考えられる中小企業の活性化を図る意図と考えられます。

公募要領によれば年間の総額予算は20億円とのこと。単純に計算すると採択数は10件となり決して楽な競争ではありません。しかしこれまで省エネ効果が小さいために応募を断念した中小企業にとっては大きなチャンスかと思います。

本記事は2020/08/03時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

朝雲の故なくかなし百日紅 (水原 秋櫻子)

さるすべりは、字のごとく梅雨明け頃から秋口にかけて呆れるほど長く花をつける木で、そのためか花の咲き始めから終わりまでにいくつかの異なった心象が投影される気がします。掲句はどうも梅雨明け直後の、季節の劇的変化に関係のある心情と思えます。