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スタートアップを活発化する新たな投資手法とは

2022/06/06

NEDOによる「研究開発型スタートアップ支援事業」のうち、「シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援(略称:STS)」の第2回公募が始まりました。受付期間が6月1日~7月1日となっているので、本日時点で締切まで4週間もありません。これから準備する場合はかなり急がないといけません。

NEDOが行っている「研究開発型スタートアップ支援事業」のメニューについてはこれまで何度か解説してきましたが、2019年9月の記事で概ね最新の全体像を解説しているので、ご興味ある方はご参照ください。

経済産業省が、日本に多くのスタートアップを産み出し、その中からユニコーンを連続的に育成する仕組みの構築する目的で一連の「研究開発型スタートアップ支援事業」のメニューをNEDOに託していることは、これまで何回かお伝えしてきました。

メニュー全体がカバーする範囲は、スタートアップの事業ステージでいえばシードステージからアーリーステージの前半まで、投資ラウンドでいえばアイデアのみのプレシードからから製品出荷が始まる「シリーズA」の直前、「プレシリーズA」あたりまでです。

その中で、今回の事業は、STS=Seed-stage Technology-based Startupsという事業名が示すとおり、カバー範囲の中央の時期に相当しますが、他のメニューと異なり毎年公募が2~3回行われていることから、NEDOとしては最も力を入れているように見えます。

STSが他のメニューと異なる点は、NEDOが認定したベンチャーキャピタル(以下認定VC)から出資を受けることが応募条件とされていることです。認定VCの選出はNEDOが行いますが、認定VCが出資する事業を判断するにあたりNEDOは一切関与しません。

ただ一つ、応募者と認定VCをつなぐための支援として行っている「認定VC へのSTS 案件紹介サービス」というオプションサービスがありますが、NEDOが提供するサービスの範囲は紹介用の共通様式(A4×1頁)と認定VCへのデリバリーのみです。

そして、その説明文にも、アンダーライン付きで、「(認定)VCの意思決定には関与しません」と書かれています。「認定VCの意思決定には関与しない」が、「認定VCから、事業総額の1/3以上出資、または同様の意思表明がないと採択しない」ということになります。

これだけを見て応募者の提案に対する事業性評価を民間のVCに任せるというのは経済産業省の責任逃れではないか?という声があります。確かにこの見方には何%か当たっている部分があるかもしれません。

しかし、「研究開発型スタートアップ支援事業」の全メニューの背景をもう少し探ってみると、日本の産業振興に対する経済産業省の危機感が見えてきます。

STSの公募要領では、採択の条件である認定VCからの出資の形態として、応募するスタートアップの株式による投資に加え、コンバーティブルな投資も認めるとあります。コンバーティブルな投資とは、いわゆる新株予約権に対して行う資金提供です。

製品やサービスの事業としての成果が未定であるシード期は、株式の評価は算出が難しい上にその算出に時間もコストもかかるので、株式による投資は費用対効果の予想制度とスピードに劣るといわれています。

そこで株式評価額の算出は事業価値がより正確に評価できるシリーズAのころまで延期し、その時点で発行される新株購入権だけを確保することための投資が「コンバーティブルな投資」であり、その中で最も新しい手法がコンバーティブル・エクイティ(CE)です。

経済産業省は2020年12月に「コンバーティブル投資手段活用ガイドライン」を発行しました。その中で米国ではシード期のスタートアップへの投資の約50%がCEであるが、日本ではいまだ10%であることが示されています。

そして2018年の実績ではシード期のスタートアップへの資金供給が、米国の1.3兆円と比較して日本では1/23の560億円でしかなかったことも強調されており、CEの普及によって日本のVCをスタートアップへの投資拡大に誘導したいとの考え方が見てとれます。

今回ご紹介したSTSはダイレクトにその動きを普及させることを目的とした事業であることがご理解いただけたと思います。この流れに乗ってみようと思われた方は是非応募してください。

本記事は2022/06/06時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

茎右往左往菓子器のさくらんぼ (高浜 虚子)

虚子の時代は現在のりんごや梨といった季節の食べ物のひとつだったと思います。珍しくもないサクランボだからこそ、器からとろうとしたらつまみそこなって茎が右往左往したというおかしみを見事にとらえました。今やこの季節のあこがれの果物になってしまった佐藤錦であれば、描き方はかなり違ってくるでしょう。