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未来の新市場は「ムーンショット」から

2022/08/22

毎年8月はあまり適切な補助金がないので、関連した政策に関するご案内などが多くなるのですが、今回は以前からご紹介したいと思っていた「ムーンショット型研究開発」をご紹介します。

この事業を主導している内閣府のウェブサイトによると、「ムーンショット研究開発制度」とは、「人々を魅了する野心的な目標を掲げて世界中の研究者の英知を結集しながら困難な社会課題の解決を目指し、挑戦的な研究開発を進める研究開発制度」とされています。

ビジネス用語としての「ムーンショット」の由来はApple社の元CEOであるジョン・スカリー氏の著作名で、これを「将来を描く、斬新で困難だが、実現によって大きなインパクトがもたらされる、壮大な目標・挑戦」と紹介しているとのこと。

面白いのは、この制度を紹介するマスメディアなどでは「我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指す」という少々過激な文言が使われていることです。

正確には、制度が必要とされる「背景」の中で「欧米や中国の破壊的イノベーションの創出に負けない研究開発が必要」とのニュアンスで使われているのですが、どうやら「破壊的イノベーションの創出」がこの制度の目的と差し替えられてしまったようです。

従い、正しくは「人々を魅了する野心的な目標」なのですが、これについては内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)と首相官邸の健康・医療戦略推進本部による2019年から2020年にわたる議論により9つの目標が決定され、公開されています。

9つの目標については、引用すると長くなりすぎるので内閣府サイトの「ムーンショット目標」ページを参照願います。

各々の目標は、文部科学省、経済産業省、農林水産省および首相官邸健康・医療戦略推進本部が分担して研究開発の具体的な構想を策定し、各省庁が管轄する国立研究開発機構に委託する形で予算を配分します。

すなわち目標1・2・3・6・8・9については文部科学省担当でJSTが、目標4は経済産業省担当でNEDOが、目標5は農林水産省省担当でBRAINが、目標7は健康・医療戦略推進本部担当でAMEDが委託事業を行っています。

残念ながらすべての目標について詳細な内容をご紹介するスペースはありませんが、2022年度の公募結果が公開されているNEDOの目標について、実施状況をご紹介します。

目標4.地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現

  • PD: 地球環境産業技術研究機構(RITE) 理事長 山地 憲治 氏
  • 研究開発期間:2022年度~2024年度
  • 予算上限:プロジェクト当たり5億円
  • 研究開発プロジェクト:
    1. 温室効果ガスを回収、資源転換、無害化する技術の開発(9課題)
    2. 窒素化合物を回収、資源転換、無害化する技術の開発(3課題)
    3. 海洋生分解性プラスチックの開発(3課題)

このような、いわば官製の研究開発目標は、GAFAMなどの民間の知恵から生まれたイノベーションとは逆の流れなので、民間企業とは関係ないと思われるかもしれません。

しかし、米国の例ではNASAの宇宙開発や防衛産業におけるトップダウンの目標設定に伴う研究開発が、その後民間転用されて大きな市場を生み出した例が多くあります。何よりインターネットの生みの親は米軍のARPANETでした。

わが国でも「ムーンショット研究開発制度」で進められているこれらのプロジェクトが、いずれは産業界でのビッグマーケットに成長していく課題が多く含まれているとみるべきです。

新たなマーケットを生み出すイノベーションに興味がある方には、「ムーンショット」はチェックすべき研究開発制度の一つかと思います。

本記事は2022/08/22時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

うつくしき世をとりもどすうろこ雲(鷹羽 狩行)

「うつくしき世」という上五に、妙に心を惹かれました。理由を考えてみると、この言葉の前に置きたいのは、「戦のない」「穏やかな気候の」「フェイクのない」「公正な政治の」など、近頃多くの人々を悩ませている諸々の文言であることに気づきました。

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