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起業前&ベンチャーの研究開発を支援

2023/05/08

今回は、公益財団法人 小笠原敏晶記念財団による起業前やベンチャーを対象とした「インキュベンチャー助成」をご紹介します。

本事業は、助成上限額1,000万円および2,000万円、採択件数はそれぞれ4件を原則とする、小ぢんまりとした助成事業ですが、いくつかユニークな点があります。

この事業は2015年に始まったのですが、ご紹介の機会があまりなかったため、事業紹介に先立ち、事業体である小笠原敏晶記念財団から簡単にご紹介します。財団名になっている小笠原敏晶氏は、自動車内装品他のプラスチック部品メーカーで東証プライム上場企業の株式会社ニフコの創立者です。

同氏は2016年に85歳で亡くなられましたが、若いころからの発明家で、ジップロック®に代表されるファスナー付きプラスチックバッグの原形は氏の発明によるものだとか。

そして小笠原敏晶記念財団は、国際的観点からの研究協力の推進、人材の育成に貢献したいという氏の想いから1986年に個人の拠出によって設立されたとのことです。

ご紹介する「インキュベンチャー助成」の事業名はインキュベーション+ベンチャーに由来します。本事業は、上限額2,000万円のプロジェクトのみが対象だった2015年から2021年までの採択実績29件(2017年のみ5件)がすべて公開されているので、いくつかのキーワードを使って整理してみます。

一つ目は、採択者に占める企業と大学の比率です。企業:大学は21件:9件となっており、これは企業が多いようです。あとでも触れますが、事業化の要素が重視されている面が影響しているかもしれません。ただし企業といっても、専門分野に特化した研究開発系の企業が中心のようです。

企業の採択案件のテーマについても、以下のようにかなりの専門性が高いと思われます。

  • 脳血管内手術の安全性を向上させる手術支援AI(2021年)
  • 世界初、生体吸収型ステープルによる消化管吻合機器の開発(2019年)
  • 中間水コンセプトを用いた分子認識材料の開発(2017年)

二つ目として研究開発分野ですが、医療機器分野を含む医療周辺分野のテーマとその他の技術分野との比率が18件:11件となっており、これは医療周辺分野が2/3に迫る件数を占めています。

財団の設立趣旨は、「高分子化学の分野における先端的科学技術に関する研究開発の一助を担う」とされており、医療周辺分野を優先する意図はなさそうですが、これらの研究開発と高分子材料とは何となく親和性があるような気がします。

三つ目として公募要領に示された選考基準と申請書様式の関係性が大変わかり易い点を挙げます。例えば、ポピュラーな事業であるものづくり補助金や事業再構築補助金は、多様化した事業タイプと複数の応募条件の組み合わせにより、公募要領のページ数は何十ページにも及び、全体像を理解するのに苦労します。

それに比べて本事業の公募要領は5ページしかありません。公募要領に示された選考基準の筆頭に公益性が挙がっていることも特徴ですが、さらに面白い点は、4項目の選考基準がそのまま応募申請書の章立てになっていることです。申請書を作成する際、これはとても書き易い構成です。

選考基準および申請様式の章立て
1) 社会への貢献度(公益性)、2) 技術の独創性(オリジナリティ)、3) 実現可能性、4) 将来性

最後に、この事業が民間の財団法人によるものであることからくる特徴を二つ挙げます。第1は、採択された場合、その翌月中に覚書を交わし、助成金が支払われること。これは的確な経費の支払いを示す証憑を必要とするため、後払いにならざるを得ない政府の助成事業ではできないことです。

第2は、申請書の「4.将来性」の後に「5.本プロジェクトについての『大義ある熱い志』」を記載する欄があること。創設者個人の「熱き想い」が表現された申請用紙かと思います。

本記事は2023/05/08時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

木々の香に向かいて歩む五月来ぬ (水原 秋櫻子)

実はこのGW、家族の都合でほとんど自宅に閉じこもっていたのですが、こどもの日に半日だけ高尾山に登ってきました。出発6時、帰宅12時という短い登山でしたが、往復の山道で「木々の香」を満喫できました。