スタートアップ量産化に向けた支援・GX編 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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スタートアップ量産化に向けた支援・GX編

2024/07/02

コンサルタントの淡河です。先週、昨年度から本格化した研究開発系のスタートアップ育成を目指す「ディープテック・スタートアップ支援基金」による補助金の公募が始まりました。

NEDOが推進しているこの基金では現在、以下の2つの補助金が同時に公募されています。

  1. 「ディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)」に係る第5回公募
  2. 「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業(GX)」に係る第2回公募

以降はNEDOによる「DTSU」と「GX」の略称を、このブログでも使わせてもらいます。

DTSUの特徴は

同時に行われているこれらの公募の内、DTSUについては昨年行われた第1回第3回の公募の際にかなり詳しく解説しました。その内容を以下に簡単に整理します。

3つのスキームで構成される

  • STS:実用化研究開発の前半に該当し、上限額は3億円または5億円、助成率2/3
  • PCA:実用化研究開発の後半に該当し、上限額は5億円または10億円、助成率2/3
  • DMP:実証するフェーズへの支援であり、上限額は25億円、助成率2/3または1/2

VC等の出資に要件あり

VCまたはCVC等の出資者(以下VC等)からの出資が応募要件。

尚、ハンズオン支援まで行うVC等である「パートナーVC」の参加が、STSでは応募要件、PCA、DMSでは審査での加点要素。「パートナーVC」は、VC等のハンズオン能力や資金調達の対応力が審査されます。

GXのDTSUとの相違点

GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業以上はGXも概ね同じですが、GXは今年度から始まった事業です。第1回公募はDTSUの第4回公募と同時期に公募され、今回が2回目です。

では、GXはDTSUと何が異なるのか。

DTSUとGXとは事業名がかなり違っていますが、実は公募要領も申請様式も共通であり、異なる点は次の2点のみです。

  • VC等の出資割合の要件がない。ただし、VC等が株主になっていることは要件。所定の期間内にVC等から助成対象費用の1/6以上の融資がある場合は、加点
    (DTSU:同期間内に助成対象費用の1/2、1/3以上などの融資要件や加点条件あり)

  • 「GXに係る取組申告書」(追加資料11)の提出によるCO2削減量の宣言が必要。

前者についてはVC等からの資金調達条件がDTSUほど厳しくないと判断できます。一方で、後者の条件は結構重たいものとなります。

GX分野のディープテック・スタートアップに求められる「取組内容」

GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業前項の「追加資料11」は高々2~3ページの分量です。しかし、「GXに係る取組内容」をしっかり検討するのはかなりの力が必要です。

この「取組内容」とは、経済産業省が国内の全企業を巻き込んで本年2月に始めた「GXリーグ」と同様の取組とされています。

即ち、応募者は、
  • 本事業によって
    1. 自らのCO2排出削減の取組
    2. サプライチェーンでのカーボンニュートラルに向けた取組
    3. 製品・サービスを通じた市場でのカーボンニュートラルに向けた取組
    を進める。

  • 2050年までのどこかの時期「20XX年」を目標時期として選定。

  • それまでに、日本と世界の化石燃料から排出されるCO2の削減目標「〇〇t-CO2」を、計算根拠を示して宣言する。
これらのことが求められるのです。

取組内容の検討に「力が必要」と書きましたが、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献することを目指して起業したスタートアップであれば、返って「腕が鳴る」事業かもしれません。

しかし、次回締切の7月24日では時間が足りないでしょうか?
であれば、予定が公開済みの10月や来年1月の締切を目指し、今から準備を始めるという方法もお勧めです。

本記事は2024/07/02時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

海からの風山からの風薫る (鷹羽 狩行)

何となく、同世代を生きている作家のおひとりと考えていたことが、訃報に接して気が付きました。年表を見ると逝かれて不思議はないお歳だったのです。掲句は「このような句が作れれば」とあこがれた句の一つです。