中小企業のプロダクトアウトに1000万円 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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中小企業のプロダクトアウトに1000万円

2016/01/12

読者のみなさま。明けましておめでとうございます。本年も補助金に関する情報提供と補助金獲得のご支援に傾注しますので、宜しくお願いいたします。

さて、今回ご紹介する補助金は、まだ予告段階ですが、NEDOによる「追加実証・用途開拓研究支援事業」です。

これまで研究開発段階の技術の実用化がテーマとなることが多かったNEDOとしては、中小企業等の弱点をサポートする、時代にあった事業かと思います。

事業の目的は、「サンプル製作からユーザーによる評価、その結果のフィードバックまでの一連の追加実証・用途開拓研究を支援し、中小企業等が実施する実用化を強力に加速すること」としています。

新製品の実用化を経験した方はお分かりの通り、我が国の現状では多額の研究開発予算を持つ大企業でない限り、ユーザーサイドでの採用見通しが不確実である状況のもとでサンプルを製作しユーザーに提供することは、殆ど不可能です。

たとえ小さなプラスチック成型品であっても、サンプル製作のためには金型や加工費、労務費他最低でも何百万円もの費用が必要です。売れる確証もなしにサンプル製作を行って見込みが外れると、たちどころに経営破綻につながりかねません。

マーケティングにおいて、製造者側が作りたい製品を市場に提供する活動をプロダクトアウト、買い手の立場で市場が望む製品を生産して供給する活動をマーケットインと呼ぶことはご存じかと思いますが、現在の環境では中小企業にはプロダクトアウト的製品開発は許されないと言っても良いでしょう。

その環境そのものは変わっていませんが、市場調査などに基づいて買い手が望むものを見極めて製品を開発するマーケットインのみが正しいとされてきた風潮は、昨今見直されつつあります。

スティーブ・ジョブスが「あなたが欲しいものはこれだ」と言ってiPhoneで通信の世界を塗り替えて以来、「エンドユーザーは本当に欲しいものを自分では気づいていない」という考え方は徐々に世界に浸透しました。

今やイノベーションにつながる製品は市場調査からは生まれないという認識は社会で共有されていると言っても良いかもしれません。にも関わらず、中小企業はもちろん、ある程度規模の大きな中堅企業であっても、マーケットイン的製品開発しか許されないのが我が国の経済環境の状況なのです。

そこで、この様な環境でも作る側の視点で世に問うような製品開発を促進するために、その最初のハードルとなるサンプル製品の製作とユーザー評価、及びその結果を反映した改良費に対して、上限1000万円、助成率2/3まで国が負担するというのがこの事業です。

その背景には、「ものづくり日本」のパワーの源は中小・中堅企業にあり、大企業だけに頼っていてもイノベーションにつながる製品は生まれないとの認識があるものと思います。

なお、本事業は2016年度の新たな事業ですが、2015年度から実施している「中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業」の実施項目のひとつとして位置付けられており、橋渡し研究機関からの協力が推奨されています。

※橋渡し研究開発促進事業の解説はコチラ

「条件」ではなく「推奨」とされていますが、橋渡し研究機関からの協力の有無は評価に大きく影響すると考えるべきです。NEDOによる2015度版「橋渡し研究機関リスト」には全国の144大学や国立研究機関が登録されているので、できればこのリストから協力先を確保して、今あなたの頭の中にあるアイデアを形にしましょう。

(参考:NEDO 2015度版「橋渡し研究機関リスト」)

本記事は2016/01/12時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

一月の川一月の谷の中 (飯田 龍田)

実はこの句、7年前にもご紹介しています。「ああそうだった」という方、長くご愛読いただきありがとうございます。「1月」の空気をこれほど直接、肌まで届けてくれる句は他に無く、再度の登場となりました。