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採択率の高さを検証・サポイン事業

2017/04/24

恒例の「サポイン=戦略的基盤技術高度化」支援事業の公募が始まりました。経済産業省の中小企業・小規模事業者向け総予算1,116億円の中で、最高額の130億円を充てている、「経営力強化・生産性向上」を目的とした事業です。

ここ数年必ずご紹介している補助金であり、前回のご紹介では「事務管理機関」に注目しましたが、今回は採択率の高さを考えてみます。

公募要領によれば今年度の採択予定件数は100件程度とのことですが、予算額から考えると少し余裕がありそうです。130億円の中には2,3年目の予算も含まれるのでこれを含めて試算すると、初年度上限4500万円向けの枠は約60億円、133件分と出ました。

実際に予算額が今年とほぼ同様であった昨年平成28年度の採択件数をみると114件だったので、今年度初めて採用される件数も120件程度と考えて良さそうです。3年間合計で1億円近い補助金事業としてはかなりの件数かと思います。

問題の採択率ですが、これも昨年の情報を見ると、応募者数は287件と公表されています。つまり採択率約40%。これは今年の年初に行われた平成28年度補正予算によるものづくり補助金(補助金上限3000万円)の採択率35%より高い数字です。

求められている応募申請書の品質(核となる技術のレベル、研究開発方法、参加メンバー等)が、ものづくり補助金と比べてかなり高度であるにもかかわらず、これだけ採択率が高い理由は、第一に公募条件となっている認定計画の存在です。

ご存知の方も多いと思いますが、この補助金に応募するには、①事前に申請した「特定研究開発等計画」が認定されている、または、②補助金の申請締め切りと同日までに「特定研究開発等計画」を申請する応募条件となっています。

①の「事前認定組」は、補助金の公募が始まる前に、「特定研究開発等計画」を提出し年間に何度か不定期に行われる審査会で認定を受けているので、それだけ内容が練り上げられていると考えられます。

②の「同時申請組」については補助金申請書の審査の前に「特定研究開発等計画」が審査され、認定相当と評価されれば(通知が来ます)その後に補助金申請書の審査が行われます。いわば「ぶっつけ本番」なので、事前認定組より採択率は下がるようです。

ただし弊社のご支援の経験では、②のパターンの同時申請で補助金は不採択になった場合も計画認定はパスしたという方が多いです。この場合は翌年の補助金に①の「計画認定済」の立場で再応募されることになるので、かなり高度に練り上げた提案になります。

採択率が高いもう一つの理由は、「事務管理機関の専門家」の存在です。前回のご紹介の際、応募の準備は「地域で事業管理機関の実績が多い公的機関を確認するところから始めましょう」というご提案をしました。

毎年のサポインでは、補助金審査の結果が公開され、開発の主体となる計画認定企業と、申請者となる事務管理機関の法人名がともに発表されますが、各都道府県で必ずと言っていいほど複数の応募案件の事務管理機関を兼務している公的機関等が見受けられます。

彼らが「事務管理機関の専門家」です。長年の経験で、提案内容に対するメキキ能力が蓄積されているのです。つまり事務管理機関を引き受ける時点での「事前選別機能」と、引き受けた提案に対する「コンサルティング機能」を有しているのです。

これらの「専門家」に事務管理機関を依頼すると提案内容にもかなりの指導が行われるので、申請する側にとって必ずしも良いことばかりではありません。ただ採択率の高さに貢献していることは確かなので、上手な付き合い方を慎重に検討するのは意味があると思います。



本記事は2017/04/24時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

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穀雨の頃の雨を菜種梅雨といい、傘をさしてしゃがむと土のにおいがします。句の「三日とは続かぬ日和」は一見晴れない気分のようでいて、土のにおいのなつかしさを思い起こします