令和2年度 経産省の施策は
8月末に毎年恒例の各省庁による次年度予算に関する概算要求がおこなわれ、その内容が公表されました。今回は令和2年度の経済産業省の概算要求の内、中小企業政策を中心にその内容を見ていきます。
(参考:経済産業省「令和2年度経済産業政策の重点、概算要求・税制改正要望について」)
ただし、毎年行われるものづくり補助金やIT導入補助金などの「生産性向上」系補正予算(今年度の場合は予算総額1100億円)の来年度については、国会で審議される年末までわからないので、今回は対象外です。
ということで令和2年度の中小企業向け当初予算ですが、筆頭には「事業承継・再編・創業等による新陳代謝の促進」が挙げられています。要求額は今年度の実績129億円と比べて2倍近い232億円です。
この要求額の増額は、後継者不在による廃業の増大を、M&Aなどの事業承継で喰い止めたいとの経済産業省の危機感の表れでしょう。「創業」の文字も見えますが、単純な創業支援ではなく、既存事業を廃業して行う第2創業が支援対象のようです。
2つ目のポイントは「生産性向上・デジタル化・働き方改革」・・・タイトルだけではよくわかりませんが、現在も今年度の第2次公募が行われている、「ものづくり連携補助金」が含まれているのはこの項目です。要求額は今年度の実績369億円から424億円に増えています。
平成31年度は、ものづくり補助金の内、企業間のデータ連携などを進める企業グループを対象とした「ものづくり連携補助金」を当初予算に格上げさせましたが、来年の当初予算ではさらに40%増の約70億円を要求しています。
今年度の「ものづくり連携補助金」は前回にもお伝えした通り1回目の公募では総額50億円の予算が余り、現在、2回目の公募が行われている状況ですが、早々と増額を要求していることから「企業間のデータ連携」に関する経済産業省の力の入れようを感じます。
そのことはこの予算枠で「共創型サービスIT連携支援事業」として20億円の新規予算を要求していることからも感じられます。ITベンダーと中小サービス事業者が共同でツールを開発し、新規事業分野を開拓する取組を支援する事業です。
確かに、IT技術を使って得意分野で連携することで差別化を目指すという企業間連携の推進は一法かもしれませんが、補助金による誘導が実際に功を奏するか否かは何とも言えません。目利きができるコーディネータが企業間の連携を後押しするような仕掛けも必要な気もします。
3つ目のポイントは「地域の稼ぐ力の強化・インバウンドの拡大」です。こちらは今年度から微増の要求額297億円です。金額的な柱は「地域未来投資促進事業(158億円)」ですが、この法律自体が来年までの時限立法なので、粛々と執行されていくのでしょう。
それより要求予算は21億円と少なめですが、海外展開に当たって越境ECやクラウドファンディングを行う事業者を活用した取り組みを支援する「JAPANブランド育成支援等事業」は目新しいところです。
海外展開インターネット経由の取引や資金調達に興味がある方はもちろんですが、これらのプラットフォームを提供する立場の方も、来年に向けて仕込みをしていただくとチャンスがあるかもしれません。
季節の俳句
葡萄うるわし まだ一粒も損なわず (高浜 虚子)
スーパーに並ぶ巨峰は少し値段も下がり、食欲をそそるばかりですが、先日ご近所の葡萄棚でカラスにも荒らされていない大きな葡萄の房に気付き、「うるわし」の語に納得しました。
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