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地方拠点、視察に助成金

2019/10/21

今回は、いつもと少々違った助成金をご紹介します。対象がICT関連企業限定、しかも1件当たりの補助額の上限がわずか10万円という事業ですが、発想が面白いので取り上げることにしました。

その事業とは、愛媛県地域産業活性化協議会が愛媛県以外の全国の企業に向けた「サテライトオフィス等視察費用助成金」です。

最近はテレビ等でもよく紹介される地方でのサテライトオフィスの候補地として、愛媛県に視察にきてもらえるなら「5万円×2人分の旅費を持ちます」というユニークな助成金です。チラシには「おいでや!愛媛県」の文字が躍ってます。

東京への一極集中と表裏となっている地方の地盤沈下はどの自治体も深刻で、企業誘致や移住者確保は最重要課題ですが、多くの場合は「来てもらえればこのような支援策があります」という宣伝が主なようです。

従って、現場まで見に行くとなると、事前にかなりの情報収集と準備をし、特に企業のサテライトオフィス候補地ともなれば50%前後まで可能性を固めたうえでないと、現地の窓口にコンタクトしないのではないでしょうか?

その点、この事業のように「視察に来てもらえば交通費と宿泊費を支援します」といわれると、「検討項目は色々残っているけど、まず、見に行くか」という気になりそうです。また「5万円×2人分(タクシー以外)」という金額も、かえって気を軽くしてくれるかもしれません。

助成金の申請書に該当する「サテライトオフィス等視察申込書」もA4が1枚のとてもシンプルなもので、負担に感じません。ICT関連企業でなくとも興味をもつ企業はあるのではないでしょうか?というより、何故ICT関連企業に対象を絞ったのでしょうか?

インターネットが普及する現代は、多くの業種で企業内にサテライトオフィスでも対応できる業務は存在します。

例えば最近はワークとバケーションを合わせた「ワーケーション」ということばを散見します。

休暇中に旅先などで仕事をする新しい働き方として、アメリカなどを中心に広まりつつあるスタイルです。ある程度の大企業が自社用のワーケーション施設を確保する、あるいは中小企業を対象にシェアできるワーケーション施設を提供するなどが可能かもしれません。

もちろんこれ以外にもサテライトオフィスとしての需要はありそうなので、ICT関連企業に対象を絞る必要は無いと思いますが、愛媛県地域産業活性化協議会としては反応を見るためにあえて分野を絞ったのかもしれません。

1月31日締切のこの事業はまだ成果が公開されていないので何とも言えませんが、もし企業誘致の実績が上がれば、この方式が全国に広がるかもしれません。助成金の結果が公表されるのが楽しみです。

本記事は2019/10/21時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

黒潮のうねりて秋刀魚せる街に (阿波野 青畝)

今年はまださんまを食べていません。スーパーで300円もするさんまは、高いというより違うものに見えて手が出ないのです。句にあるようにかつて秋刀魚は大量に水揚げされて街を潤し、値を気にせずに買い求めるものでした。そのような日が戻ることを祈ります。