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令和3年度概算要求を読む

2020/10/12

例年では8月末に行われる各省庁からの次年度予算概算要求ですが、今年に限り新型コロナウイルス感染症の影響でひと月遅れの9月30日付でその内容が公表されたので、今回は令和3年度の経済産業省の中小企業政策を中心に概算要求の内容をお伝えします。

(参考:経済産業省「令和3年度 地域・中小企業・小規模事業者関係の概算要求等のポイント」

ただし、例年同様、今年度の補正予算で来年実施される「生産性向上」系補正予算(ものづくり補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金)は年末以降にならないとわからないので今回は割愛します。

最も、わからないといいつつ、内容が過去数年来は概ね同じ方向性であったため、昨年までは予算総額の比較的小規模な増減以外は大体予想できたのですが、今年に限って二つの理由で見通しが立たない状況です。

理由の一つは、当然ながら新型コロナウイルス感染症の先行き。今年の春から実施された「令和元年度補正ものづくり補助金」などは、すでに春から「令和2年度補正」が追加され、他の補正予算にもコロナ特別枠としての予算追加が行われています。

今後、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの「ツインデミック」の影響がどの程度かによって、令和2年度の補正予算は昨年までの実績から大きくぶれる可能性があります。

さらに状況を不透明にしているのが、菅政権による中小企業政策変更の可能性です。巷では菅総理は以前からゴールドマン・サックスで日本経済を分析したデービッド・アトキンソン氏の信奉者であり、氏の近著「日本企業の勝算」に傾倒しているとか。

これまで経済産業省は、国内企業の99.7%を占める中小企業の育成に関して企業規模では差を付けず、どちらかと言えば補助金の補助率や外部専門家の支援などで小規模事業者を優遇してきました。「規模」より「経営力強化」に力点を置いてきたといえます。

一方、「生産性を高める力がない大量の小規模事業者が日本全体の生産性の低さの原因」「大企業と中堅企業が本当の日本の『宝』」とするアトキンソン氏の主張は、これまでの経済産業省の方向性と真っ向から対立するようです。

今回の概算要求の中では、まだ中小企業支援という重心が大きくシフトする傾向までは読み取れませんが、菅政権の影響力が強まるであろう12月の通常国会では、アトキンソン氏の主張が透けて見えるような中小企業支援策の方向転換があるかもしれません。

というわけで、すっかり前置きの方が長くなってしまいましたが、来年度の概算要求の内容です。

まず、事業承継関連の予算が目玉のようです。「事業承継補助金」自体は今年度から比べて縮小されているのですが、総予算額としては2倍近い要求額となっています。

増えた予算は、主に中小企業のM&Aを支援する「事業引継ぎ支援センター」の強化に充てられるようです。予算枠につけられたタイトルも「事業承継」に「経営資源集約化・再生等の新陳代謝の促進」というワードが加えられています。

追加されたワードは中、小規模の企業から中堅・大企業へのシフトを連想させますが、実際はどうなるのでしょうか?アトキンソン氏の主張を知った後では、何となく政府方針への影響の表れのような気がしないでもありません。

次の注目は「研究開発・海外展開等を通じた生産性向上による成長促進」です。こちらの主役は例年通り増額された「戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(サポイン事業)」で要求額147億円です。

またベンチャー企業育成を目指したNEDO事業である「研究開発型スタートアップ支援事業」も予算倍増です。

そして最後のグループは「デジタル化推進」「経営の下支え」「地域強靭化」の3つの主要な事業で構成されていますが、現時点では「生産性向上」及び「給与総額の向上」などが共通したうたい文句であること以外はよくわかりません。詳細が決まるのにもう少し時間がかかりそうです。

以上、経済産業省の令和3年度概算要求の内容を斜め読みしましたが、やはり気になるのは事業承継関連の予算に使われているワードに垣間見える菅政権の今後の動きです。

アトキンソン氏の主張がもし政府方針に影響するのであれば、来年度以降の中小企業政策は大きく動くかもしれません。

本記事は2020/10/12時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

栗甘く われら土蜘蛛族の裔(津田 清子)

実は好きな句です。土蜘蛛族かどうかわかりませんが、舌で感じる栗の甘さという、我々の最も原初的な感覚を通じて、ほ乳類どころか脊椎動物、さらに古い時代に遡って他の生き物の命に繋がっている感触が湧いてくるのです。

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