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IT化を専門家にお安く相談する方法

2020/11/24

今回は「中小企業デジタル化応援隊事業」をご紹介します。

一応補助金なのですが、受け取る人は中小企業ではなく、中小企業のデジタル化を支援する「IT専門家」です。これだけではよくわからないので順番に説明します。

まず、前提として、政府としては経営基盤が弱い中小企業を「デジタル化」で強化したい。そのために、ここ数年来「IT導入補助金」などで中小企業のITツールへの投資を促進しようとしています。

しかし、規模が小さい企業ほどIT人材が不足する傾向があり、経営者としてはどのようにIT化を進めるべきかを検討させる人材が社内にいないのが現状です。

かといって「デジタル化戦略」の策定を、外部のIT専門家に委託したくても、その専門家の「腕前」とか「報酬額の妥当性」を適正に評価する自信もないので、結局、外部の専門家への依頼を躊躇してしまいがちです。

そこで、経済産業省が考えた仕掛けが、「デジタル化を進めたい中小企業」と経済産業省に登録した「IT専門家」をマッチングさせ、その報酬の一部を「謝金」という名目の補助金で直接「IT専門家」に支払うというものです。

補助金の額は、時給では3500円まで、一社当たりでは30万円までとしていますが、時給で考えるとわかり難いので、ここでは「1社上限30万円の補助金」と考えてください。

例えば、「デジタル化に向けて、適正な費用で外部の専門家にIT戦略の策定を依頼したい」と考えている社長のAさんがいたとします。

A社長が「中小企業デジタル化応援隊事業」に自社を登録すれば、経済産業省が事業内容に合わせたIT専門家を紹介してくれて、さらにその専門家にIT戦略の策定を依頼すれば、その費用のうち30万円まで経済産業省が支払ってくれる、という訳です。

「デジタル化したい」A社長にとっては結構嬉しい仕掛けではないでしょうか?ただし、問題は、「そのような社長さんがどれだけいるか?」です。

そもそも規模が小さい企業ほどIT化が遅れている原因は、IT化の重要性に対する経営者自身の認識が低いことが根本の問題なのかもしれません。

そこは経済産業省も考えているようで、公開されている本事業の手引書には、運営事務局と連携してデジタル化の啓蒙活動を担う「経営支援専門家」について(現在検討中)と書かれており、中小企業とIT専門家の両者に向けて参加呼び掛けする部隊を準備する考えのようです。

ただし、そもそもこの事業は今年4月の「令和2年度補正予算」の中で、総額100億円もの予算額とともに公開されたものです。それが、IT専門家と中小企業の登録受付が始まったのは9月1日でした。

ずいぶん時間がかかったのは、事業スキームの組立が難しかったのかもしれませんが、それからさらに2か月以上たった今の時点で参加呼び掛けの強化を「準備」しているということは、これまでの登録件数の経過が芳しくなかったのでしょう。

事業期間の期限は2021年2月28日で、今からでは年末年始を挟んでの3か月少々しかありません。もしかすると事業期間を延長するかもしれませんが、考えてみると2月末というのはそろそろ来年度のIT導入補助金の公募が始まる時期です。

なるほど、これまでデジタル化に手が出なかった中小企業が、「中小企業デジタル化応援隊事業」によって来年2月までに導入すべき適切なITツールを見極めてもらい、引き続いて公募が始まるIT導入補助金に誘導しようという考えでしょうか?

このストーリーはこちらの勝手な想像ですが、たぶん正解です。もし、あなたが「デジタル化の圧力が気になるが、どこから手を付けるべきか」と悩んでおられるA社長であれば、この流れに乗ってみては如何でしょうか?決して損はないと思います。

本記事は2020/11/24時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

霜月や 雲もかゝらぬ昼の富士 (正岡 子規)

宅地化が進む武蔵野では、富士山が見える場所が年を追うごとに減っていて、自転車の通勤路で富士山が望めるスポットは今や2か所のみです。
さらに、地表近くに水蒸気が多い春から秋はほぼ全滅で、たとえ朧げにでも富士の雄姿が見えるのは立冬以降です。 子規の頃は今よりはるかによく見えたと思いますが、それでも「雲もかからぬ」富士山が見える日はそれほど多くはなかったと思います。