事業を「譲る」「譲り受ける」、両者をサポート
今回は、経済産業省が、悩みの種である事業承継問題を何とか解決すべく昨年度から開始した「事業承継トライアル」という、かなり変わった事業をご紹介します。「事業承継・引継ぎ補助事業」の一部という位置づけです。
はじめにお断りしますが、大きく分けて「会社を譲る」側と「会社を譲り受ける」側に分かれるこの事業の補助金額はかなり小さく、前者でも350万円、後者では40万円という、小規模事業者持続化補助金より低い金額です。
それでも、この補助金にはかなり通常と違う性格があり、なかなか面白いのです。なにより、「会社を譲る」側と「会社を譲り受ける」側の2つの事業の執行管理団体として2社を選び、全く異なる体裁で公募受付を行っているのです。
「会社を譲る」側の執行管理団体はPwCコンサルティング合同会社(以下PwCと表記)。世界中に28万人ものスタッフと155の法人ネットワークとを要する、世界の4大コンサルタントファームの一つである企業の日本法人です。
PwCは国内だけでも2020年の売上は1876億円で、しかも過去5年間に約800億円も売上をのばしています。
また「会社を譲り受ける」側の執行管理団体、株式会社バトンズは、社員が39名と規模で比べれば小さいですが、母体が日本最大のM&A仲介会社である株式会社日本M&Aセンターです。M&Aに関する企業情報とノウハウは親会社と共有しているでしょう。
どちらも、この事業の執行管理団体として参加する目的が、単なる売上確保でないことは明らかです。
経済産業省は、2025年までに現在後継者のいない127万社が廃業していくと、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があると予測しています。
これを逆から見ると、2025年までに後継者の育成やM&Aによって廃業を喰い止めるためのノウハウが求められており、その市場規模が22兆円と考えることもできます。
確かに、PwCが管理する「会社を譲る」側の公募要領を見ると、p4にある補助事業の概要に「名称:後継者教育事業」と示されていて、こちらは経営者が廃業を考えている会社に対して外部から後継者を招聘する形によって事業承継の実現を支援する事業です。
またバトンズが管理する「会社を譲り受ける」側の公募要領は3種類用意されているのですが、そのうち<ビジネスDDサービス><経営引継ぎ支援サービス>はセットで、譲り受ける予定の会社の事前の評価と検証の支援です。
また残りの<リブランド>は譲り受けた後の経営戦略策定への支援ということになり、3つの公募要領には共通して【特に1億円未満の事業者が汎用的に使える後継者教育の「型」を策定することを目的とする】と示されています。
経済産業省が世界のトップクラスのコンサルタントファームやM&A専門企業をパートナーとして約650万人の雇用と約22兆円のGDPを維持するための手法を産み出したいとの意図が見えてきます。
また、参加した2社も、既に顕在化しているともいえるこの巨大な「事業承継市場」に先鞭をつけるための糸口を、この事業を通じて掴みたいと考えているのでしょう。
さて、「会社を譲る」経営者と「会社を譲り受ける」経営者が、この事業で続々と生まれてくるでしょうか?後継者のいないあなたはこの事業に乗ってみたいですか?
季節の俳句
夏至ゆうべ地軸のきしむ音少し (和田 悟朗)
一瞬、何の比喩?と思いましたが、掲句の作者は生前、物理化学の教授をされていたとか。宇宙の時間では地軸はかなり激しく動いていることを踏まえた句でしょうか?いずれにしろ、月のあたりから地球を眺めている風情で、地上の「不快指数」を一瞬忘れます。
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