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中小ものづくりの得意分野を支援する新エネルギー事業

2021/07/05

今回は、8月中旬公募予定のNEDOによる「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」の第2回公募をご案内します。

現在、予告情報のみで公募要領は未公開ですが、第1回と同じとの前提でご案内します。

この事業の名前は3年前まで「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業」だったのですが、さらにその前は「新エネルギーベンチャー技術革新事業」でした。補助事業のベースとなる基本計画も何回も更新されていますが、スタートは2010年です。

すでに11年目という、補助金にしては長い歴史があり、年を追うごとに少しずつ複雑化しているのですが、NEDOとしては2つの面で徹底していることがあります。

一つは「省エネルギー」と明確に分離すること。これは機関内の組織が省エネルギー部と新エネルギー部に分かれていることとも一致するのですが、新エネルギーの定義を以下のように限定することで、省エネとの混同を避けています。

「太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス利用、太陽熱利用及びその他の未利用エネルギー分野並びに再生可能エネルギーの普及、エネルギー源の多様化に資する新規技術」

もう一つはステージゲート方式、すなわち技術開発レベルに従っていわば初級から入って、中級、上級と順に進んでいく進級方式であり、各ステージへの応募資格を、かなり厳密に規制するというやり方です(補助金ページ参照)。

NEDOとしては、応募開発計画の技術レベルが自分たちの判断基準でどのフェーズであるかを確認しながら支援したいとの意図があるようです。

以上がこの補助事業の制度面から見た特徴ですが、お伝えしたかったのは求められている技術の中身です。産学連携で応募する場合の初級、中級に該当する「社会課題解決枠フェーズA、B」において設定されたAからHの8分野の課題にそれが表れています。

NEDOが設定する課題をリスト化した「別添1」から、具体的な記述を幾つか拾ってみます。

  • 太陽光発電利用促進分野における「設備の汚れや劣化を抑制する技術」(A-3)
  • 風力発電利用促進分野における「落雷対策技術」(B-1)
  • 燃料電池利用促進分野における「構成部材の低コスト化」(D-1)
  • 再生可能エネルギー熱 利用 促進 分野における「低温領域(80℃以下)の廃熱利用を可能とする技術」(F-1)

どれも高度で大規模な研究開発を伴うイノベ―ションというよりは、日本のものづくり中小企業が得意とする「現場力」が活躍する分野ではないでしょうか?

2050カーボンニュートラルの実現に向け大きな責任を担ったNEDOは、多くの分野にまたがった研究開発支援を行っており、その中にはこれまでにない高度なイノベーションを求める補助事業も含まれています。

ただし、新エネルギー開発に限っては、前述した例のように、実用化後の「改善」や「低廉化」を目的とした技術分野に範囲を限定し、その社会実装を確実にするための現実的な課題を消化するという方針のようです。

これは多くのものづくり中小企業が活躍できるフィールドかと思います。興味ある方は今後公開される公募要領の前に、まずはすでに公開されている「別添1」をじっくり眺めてください。「当社の技術で解決できる」という課題が見つかるかもしれません。

本記事は2021/07/05時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

つばめの子ひるがへること覚えたり (阿部 みどり女)

最近、自宅の周りでもよく燕が飛んでいます。目で追うのが難しいくらい素早く方向転換して視界から消えるのですが、中にはぎこちない飛び方をしているものもいます。 燕の子の俳句を探していて掲句をみつけ、「あぁそうか」と思い当たったのでした。