対象の幅が拡大した「事業再構築補助金」
7月30日付で「第3回事業再構築補助金」の公募が公開されました。
第2回公募から修正された内容を見ていくと、新規応募の呼びかけに加え、第1回応募での不採択者の再応募にも期待していることがわかります。
「通常枠」の修正や「大規模賃金枠」の新設、あるいは運用の見直しなどの修正がそれにあたるのですが、それに加えて、「最低賃金枠」という枠の新設という、少々意味が異なると思われる修正も行われたようです。
順番に見ていきましょう。新たな応募を呼び掛ける効果が期待される修正は、まず通常枠の補助金上限額の引き上げです。正確に言うと、従業員51人以上の企業に対してのみ上限額が6000万円から8000万円に引き上げられました。
逆に従業員20名以下の企業は上限額が4,000万円に引き下げられたのですが、これは第1回公募の応募状況から、この規模であれば応募拡大への抑制とはならないとの判断かと思われます。
またその延長線として、「大規模賃金枠」が追加され、従業員101人以上の企業向けに補助金8000万円超~1億円というクラスが追加されました。
「通常枠」「大規模賃金枠」を併せてみれば、全体としては従業員の規模に合わせて上限額を変化させることにより、応募への壁を下げる効果を考えたのではないかと思います。
ではなぜ「大規模賃金枠」の従業員101名以上のクラスも「通常枠」に取り込んでよりシンプルにしなかったのか?これは先に述べた「意味が異なる修正」にかかわる仕掛けと思われるので、のちほど説明します。
さらなる応募を誘う呼びかけは運用の見直しにも見受けられます。「売上高10%減少要件」の対象期間が2020年10月から2020年4年に遡って拡大され、また売上高減少が該当しなくとも付加価値額の減少があれば要件を満たすことになりました。
さらに、「事前着手」が許される期間が、予告と異なり2月15日のまま据え置かれました。これらはいずれも新規応募や第1回公募の不採択者の再応募の前提条件を低くする修正なので、「予算が余らないように」するのが目的と考えられます。
さて、「最低賃金枠」の件です。この枠は「緊急事態宣言特別枠」同様、補助金の上限額が最大でも1500万円と抑えられていますが、審査時に加点される上、補助率が優遇されます。
対象となるための要件はいろいろと細かいですが、主要な条件は「最低賃金+30円以内で雇用している従業員が10%以上いること」という項目です。狙いは該当する小規模事業者の付加価値増加に伴う最低賃金の上昇かと思われます。
この方針は従業員数101名以上が対象の「大規模賃金引上枠」でさらに明確に示されます。「事業内最低賃金を年額45円以上引き揚げ」「従業員数の毎年1.5%以上増員」などが事業計画で示されることが応募条件となっています。
まさに「最低賃金の引き上げ」と「中堅・大手企業へのリソースの集約」が日本の生き残りのカギであるという、2020年10月号でご紹介したデービッド・アトキンソン氏の持論が、補助金の条件という形で政策に実装されていると考えられます。
この思惑が果たして成果に結びつくのか?数年後の中小企業白書が楽しみですが、当面以上のような「事業再構築補助金」の応募条件をクリアできる方はぜひチャレンジしてください。おそらくこの事業は今年度限りです。
季節の俳句
原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ (金子 兜太)
今年も8月がやってきて、思い出すのはこの句です。6日、9日の原爆忌に拮抗できるのは炎天に焼かれた瓦礫をあゆむ、兜太が生み出した蟹くらいでしょう。
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