高リスクの実用化開発に10億円
新型コロナウィルス感染症が広がって以降、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」はすべてコロナ向けの「特別枠」が用意され、さらに今年度はコロナ対策が主目的の「事業再構築補助金」の5回の公募が加わってまさにメジロオシ状態になっています。
このような状況で、2019年に予告した文部科学省傘下JSTの事業、A-STEPをご紹介する機会が得られないまま時間が過ぎてしまいました。コロナ関連の補助金のご案内が一段落したこともあり、このタイミングでご紹介します。
事業名は「A-STEP企業主体(返済型)」。JSTによる、ほぼ唯一の企業向け支援事業シリーズの一つです。
このシリーズを最後にご紹介したのは上記の通り2019年ですが、コロナ対策に追われて間隔が明いているうちに事業枠が改編し、3つのメニューに整理されました。
3つとは、企業とJSTの共同出資の形で研究開発を進める「産学共同(本格型)」と「企業主体(マッチングファンド型)」、及び今回ご紹介する「企業主体(返済型)」です。
前者2つは今年度の公募は終了していますが、「企業主体(マッチングファンド型)」については、事業名と事業予算が変わったものの前回、2019年にご紹介したA-STEPの「NexTEP-Bタイプ」の内容をほぼ踏襲しているのでご興味ある方は前回のご紹介内容をご覧ください。
ところで今回の「A-STEP企業主体(返済型)」は、研究開発費の総額10億円をJSTが一旦負担するものの、「開発が成功」した場合、事業名にあるとおりその全額を10年以内に返済するルールになっているので、補助金とは言えません。
利子は不要とは言え全額返すのであれば融資に近くなってしまいますが、この事業が支援事業である理由は、開発がJSTによって失敗したと判断された場合、返却する金額が研究開発費の10%に減額されることです。
一方のマッチングファンド型は一般の補助金同様研究開発費総額の2/3または4/5をJSTが提供し、その返却は求められないので、一見こちらの方が断然有利に見えます。ただし、研究開発の内容によっては、必ずしも返済型が不利とは言えません。
例えば新型のLSIの開発や新たな金属加工技術の高度化、太陽電池の高効率化といった、これまでの技術の蓄積の上で新たな課題を解決するような研究開発であれば、事業化による収益確保は比較的確実と考えられます。
従って研究開発費の一部に自己資金を投入してもリスクはそれほど高くないため、マッチングファンド型が適しているでしょう。
逆に、成功すれば確実に巨額な利益が得られるものの、求める機能を実現する手段を発見するには幸運が必要な課題の場合は、失敗した際の自己負担が10%ですむ返済型がありがたいでしょう。
ノーベル賞に選ばれた青色発光ダイオードや、古くはエジソンの電球など、あらゆる可能性を試し、失敗を積み上げたのち成果に行き着く類の研究開発には「企業主体(返済型)」がお勧めです。
季節の俳句
其中に金鈴をふる虫一つ (高浜 虚子)
門下の川端茅舎の作風は「茅舎浄土」とも言われましたが、掲句などは茅舎の師として一脈通じる気がします。「金の鈴」ではなく、「キンレイ」の音を選ぶセンスには敬服します。
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