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令和4年度の補助金を読む

2021/09/21

今回は、個別の補助金事業のご紹介はお休みし、8月31日に公開された各省の令和4年度概算要求の中から、来年度の経済産業省の補助金の傾向を読み解きます。

(参考:経済産業省「令和4年度 中小企業・小規模事業者関係の概算要求等のポイント」)

令和4年度の全体の印象としては、コロナ禍における喫緊の対応と、スタートアップの育成などのポストコロナにおける持続性のある支援を意識した事業内容が多く見受けられます。

では、具体的にいくつかの補助金を見ていきましょう。

今年度、1兆1,485億円という巨額な予算をつぎ込んでいる「事業再構築補助金」は令和4年度の当初予算としては、「ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業」とあわせて25.4億円の予算とされています。

「大幅に縮小して継続?」とも取れますが、そもそも「事業再構築補助金」は令和2年度の特別補正予算であったため、令和4年度の補正を含んだ最終予算額は、衆議院選挙後の国会までわかりません。今回の概算要求では来年度の当初予算に計上されたことが重要かと思います。

現在開示されている資料を見る限り、令和4年度の当初予算で確保された「事業再構築補助金」の内容は、現行の事業が3つの枠と対象事業者の規模、それぞれの詳細な要件など、かなり複雑な構造であるのと比較して、よりシンプルな構造になることが予想されます。

また、あまり想像したくありませんが、仮に年末頃にコロナの第6波が来るようなことがあれば、補正予算で大きく積み増しされる可能性もありそうです。

次に「事業承継・引継ぎ補助金」について。今年度予算が16.2億円だったのが、令和4年度は47.1億円と予算が増額されています。また内容も支援の目標事業者数を倍増し、上限額も概ね1.5倍ほどになっています。

さらに類型として「事業再生」が追加され、「事業承継」「事業引継ぎ」と併せて雇用の維持への影響を最小限に抑える取り組みを重視するとのこと。

予想以上に深刻なコロナ禍の影響もあってか、昨年度来の「中小企業は保護から育成へ」という方向転換が一時休みし、生き延びるためのサポートが厚くなっているように思われます。

技術開発に関する事業も注目されます。

NEDOの「研究開発スタートアップ支援事業」は、昨年の倍増に続き、今回の概算要求ではさらに3倍以上の72.7億円とされており、事業開発領域でのビジネスモデルの構築を目指すスタートアップやVC等を対象とした「PMF(Product Market Fit)」という新たな事業も加わるようです。

また、例年4月頃に公募されているいわゆる「サポイン事業」も今年の1.5倍の予算となり、「成長型中小企業等研究開発支援事業」として継続されます。

一方、毎年の補正予算で行われる「ものづくり補助金」、「小規模事業者持続化補助金」、「IT導入補助金」の生産性革命推進事業3点セットは、もちろん当初予算である今回の概算要求には含まれませんが、こちらは例年通り令和3年度の補正予算から組まれることが予想されます。

この3点セットは、これまで社会状況に合わせて柔軟に加点要素を修正・追加してきた経緯があります。今の時点では詳細は不明ですが、実施の継続については明言されていますので、情報が公開されましたら改めてお知らせいたします。

以上、令和4年度の経済産業省による概算要求を概観してみました。今秋は自民党総裁選から衆院選と、慌ただしく国の中枢が動き、補正予算が大きく動く可能性もあります。弊社は今後も補助金の動向を注視し、皆様にお伝えします。

本記事は2021/09/21時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

草いろいろおのおの花の手柄かな (松尾 芭蕉)

今回は「草の花」で気に入った一句を探したいと思い歳時記をめくっていたのですが、この句には驚きました。槇原敬之作詞作曲でSMAPが歌った「世界に一つだけの花」の世界観が、既に1644年生まれの芭蕉によって表現されていたのです。芭蕉、恐るべし。