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アジア拠点への設備投資支援

2022/02/07

今回はJETROによる「海外サプライチェーン多元化等支援事業」をご紹介します。

現在第5回の公募中です。上限額15億円とかなり大型の事業ですが、第1回は2020年5月であり、2年弱の間に5回の公募とはかなりの頻度です。

目的は「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、我が国サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、特にアジア地域における生産拠点の多元化等によってサプライチェーンを強靭化し、日ASEAN経済産業協力関係を強化すること」と明記されています。

「我が国の産業振興」ではなく、「日ASEAN経済産業協力関係を強化する」というところがJETROらしいところですが、冷静に読むと通常の補助金同様国内企業のための支援事業であることに変わりはありません。

過去4回の採択率が公開されているので確認したところ以下の結果でした。大企業も対象なので、ついでに各回の採択企業の内大企業がどれだけあったかも記載します。

公募回応募数採択数(内、中小企業)採択率
第1回12430(8)24%
第2回6421(11)32%
第3回15530(16)19%
第4回3811(6)29%

第2回公募に限り、支援対象が他の「設備導入」と異なり「可能性調査」であったため少々性格が異なりますが、4回目の公募では内容が1,3回目と概ね同じであるにも関わらず、応募件数が大きく下がっています。

「設備導入」とは、「機械装置等製作・購入費とその改造費、及び工場建設のための土木工事費」であり、要するに支援対象があらたな工場建設のための費用に限定されていることから、この事業の需要が一巡したのではないかと予想されます。

第4回公募の締切2021年3月から1年近く公募が無かったので、JETROもこの事業の役割が終了したと考えたのかと思っていたのですが、予想を覆しての第5回公募開始でした。

ただし仮に需要が低下しているのであれば、1年程度で回復するとは考えにくいので、第5回の応募件数は第4回に引き続き低く抑えられることになるでしょう。つまり応募する場合は競争率が下がって有利ということになります。

さて、本事業の補助金額の算出については独特の算出方法を採用しているので注意が必要です。内容がかなり複雑なので、詳しくは公募要領を見ていただきたいのですが、一言でいえば補助率を算出する計算式が2段階で用意されているのです。

第1段階では企業の規模や事業総額の金額帯に準じて用意された係数により補助金額を計算する仕組みであり、事業の総額が決まった時点で正確に算出することが可能です。

問題は第2段階で、審査の過程で審査員が決定する「補助率調整指数」の導入により、第1段階で算出した補助金額が削減される可能性があるのですが、その比率が100%、80%、60%、40%、20%と大きく変動するのです。

補助率調整指数の評価基準は「サプライチェーン強靭化への貢献度合い」および「事業対象製品・部素材が途絶した場合の影響の大きさ」とされていますが、明確な評価基準が示されていないので、応募する時点では正確な予測は不可能です。

このような見通しの悪さも応募件数の減少の一因かもしれません。とは言え、例えば中小企業がASEANでの総額30億円の工場建設計画が採択された場合の補助金を計算すると、A評価(100%)では約12億円とかなり魅力的です。

応募を検討される場合は、まず「補助率調整指数」で高評価を得られるかを吟味することが重要のようです。

本記事は2022/02/07時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

木の間とぶ雲のはやさや春浅き (三好 達治)

立春が過ぎても寒いのは当たり前とはいえ、身に応えるのは風の冷たさです。もちろん北風なので、帰りの自転車ではもろに向かい風のためその厳しさは倍加します。朝の天気予報で午後の風速が5mを超えているとそれなりの覚悟が必要なのです。