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A-STEP産学共同事業、今年は採択増?

2022/04/18

今回は、文部科学省予算で行われる「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」の内、産学共同事業をご紹介します。管轄するのは国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)です。

産学共同事業は「育成型」と「本格型」の2つに分かれてるのですが、「育成型」は終了時点での産学連携の形成が目標であり、公募対象は大学等の研究機関のみで企業が含まれていないことから、ここでは「本格型」を中心に解説します。

「本格型」では企業側から企業責任者を、大学等からは研究責任者を選定するのですが、産学共同研究チーム全体の代表者であるプロジェクトリーダーは企業責任者が担うことになります。

これは「本格型」の目的が、研究開発成果の社会実装を目的とした、大学等の技術シーズの可能性検証及び実用性検証であり、支援終了後には得られた成果に基いて、支援企業によって実用化に向けた研究開発を継続して欲しいとの意図があるためです。

「本格型」の研究開発実施期間は最長6年と長期であり、その間にJSTが負担する研究開発費の上限額は、初年度5,000万円、2年目以降1億円としてるので、かなり大型の事業と言えます。

ただし、令和4年度については、「より多くの研究提案に機会を与えたい」という観点から、初年度1,500万円、2年目以降3,000万円とかなり絞り込まれています。6年間の総額でも「1億円程度を期待する」とされていてなかなか予算が厳しそうです。

なお、本事業における研究開発費の支援は、大学等の研究開発費は全額JSTの負担となりますが、連携する企業については「マッチングファンド」という形をとっているのが特徴的です。そして資本金の規模により企業とJSTの負担する研究開発費の比率を変えています。

企業の資本金の大きさとJSTが負担する研究開発費の比率(マッチング係数)は以下の通りです。

  • 資本金10 億円を超える企業等はJST負担の1倍(負担率は1/2)
  • 資本金10 億円以下の企業等 は同2倍(負担率は1/3)
  • 資本金1 億円以下、または設立から10 年 以内の企業等は同3倍(負担率は1/4)
少しわかりにくいかもしれないので、資本金1億円以下の企業と大学一校の連携による提案の場合を考えてみましょう。JSTの年間支援総額を3,000万円(1年目は1,500万円)、そのうち400万円が大学の研究開発費として2年目以降の年間総額を試算します。

まず企業向けの支援は残額の2,600万円となります。そして企業自身が負担する研究開発費は2,600万円/4(マッチング係数3倍)=650万円です。即ち650万円で大学分含めて3,000万円の研究開発ができることとなり、単純計算による補助率は78.3%となります。

研究開発費の説明が長くなってしまったので、その他の特徴を手短に示します。

2つ目の特徴は、募集する4つの技術分野を統括する4人のプログラムオフィサー(PO)がその道の有名人である企業OBや現役の大学教授から選任されていることです。4人とも簡単な経歴も含めて公開されているのでインターネットですぐに実績が確認できます。

3つ目の特徴は、企業責任者及び研究責任者が「研究倫理に関する教育プログラムの受講・修了」していることが応募条件であること。いくつかの補助金で採択された後に受講を求められる例はありますが、応募条件とされてるのは文部科学省系だからしょう。

一般企業にとってはなじみが薄いことを考慮したためか、公募要領の中ではeAPRINという機関が提供する教育プログラムのダイジェスト版も特別に紹介されています。

以上のように経済産業省系の補助金との違いもありますが、産学連携の研究開発に興味のある企業にとっては見逃せない事業かと思います。

本記事は2022/04/18時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

うららかや川を挟みて次の駅 (岩田 由美)

いかにも春の旅ですね。妄想がひろがります。緑なす山々を各駅停車の列車で辿り着いた駅で、時間合わせの停車中に求めた駅弁を開きながら、眺めた風景でしょうか?もちろん片手には缶ビールです。