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高度な医療機器の基礎研究を支援

2023/02/20

脱炭素系の事業のご紹介が続きましたが今回は医療機器関連の話題です。AMEDによる令和5年度「医療機器等研究成果展開事業」(開発実践タイプ)をご紹介します。最近あまりAMEDについて説明していないので、今回は最近の読者のためにごく簡単に概要を示します。

AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)は平成27年に設立された機関です。それ以前には厚労省、文科省、経産省など複数の省庁に分散されていた医療・介護系の研究開発予算を、国としての研究開発を効率化して国際的な競争力を強化する目的で一つに統合されたという経緯があります。

したがって、医療機器関連以外にも、医薬品、再生・細胞医療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤や基礎研究などの分野で補助事業や委託事業の形で多くの支援を行っています。

ただし、弊社がご支援するものづくり系の中小企業やスタートアップが応募しやすい分野としては医療機器開発が適していることから、結果的に医療機器・ヘルスケア分野の事業のご紹介が多くを占める状況となっています。

というわけで本事業も同じ分野での開発となりますが、まず注意していただきたいのは、一般医療機器(クラスI)は支援対象外である点です。クラスIとは、医療機器が使用目的に沿って使用される場合に不具合を起こしても、人の生命および健康への影響が極めて低いとされる、聴診器や拡大鏡・顕微鏡のような機器です。

対象となるのはMRIや超音波診断装置が該当するクラスII、さらに透析機器やペースメーカーのように不具合が人命に直接かかわるクラスIIIやIVの「高度管理医療機器」の開発です。

次に、吟味する必要があるのは研究開発のステージです。医療機器・ヘルスケア分野についてはシーズの段階から順次開発が進んで製品化に至るまでに次のような研究開発のステージがあります。

第1ステージ 第2ステージ 第3ステージ 第4ステージ 上市(製品化)ステージ
基礎研究 製品開発 非臨床的検証 臨床研究・治験 薬事承認

通常、AMEDの医療機器・ヘルスケア分野の支援事業は上記の内の2つまたは3つのステージにまたがって支援する場合が多いようです。ただし本事業は、3年の研究開発期間のなかで、第1ステージから第2ステージの初期である「要求仕様の決定」、即ちその医療機器は何を目標に開発するのかを明確にするところまでの開発が行われることを想定しています。

開発段階としては初期に当たるわけですが、あくまで製品化が目的なので、例えば新しい医療機器のアイデアを考えた医師が、ものづくり企業にプロトタイプの製作を依頼する場合を想定したとき、この企業に医療機器開発の経験がなければ専門性の高い薬事申請まで行きつくことは至難の業となります。

そこで、AMEDとしてはこの事業への応募の条件として、少なくとも3年目の開発については、事業化経験、すなわち開発した製品を、非臨床的検証から臨床研究・治験を経て薬事申請・承認まで経験した実績がある事業者の参画が必須としています。

つまり3年目には、「提案された技術が有効か」との検証に加え、「それを医療機器として製品化するための体制を有しているか」という評価を満たさないとステージゲートが通過できない仕組みになっているのです。

この考え方に準じて、研究開発予算の上限も、3年目は1、2年目の直接費2000万円から増額されます。増額幅は開発機器の医療機器クラス分類に従って差をつけており、クラスIIで2690万円、クラスIIIで5000万円、クラスIVでは6000万円と3倍増となります。

本事業は消費税を含めて全額AMEDが負担する委託事業であり、また間口を広げる目的と思いますが採択予定件数が15件と、AMEDとしては大判振る舞いなので、条件を満たす研究開発を行っている方はぜひ応募してください。

本記事は2023/02/20時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

春めきて ものの果てなる空の色 (飯田 蛇笏)

「ものの果て」などという言葉をどのように解すべきか、気になったので調べてみました。「冬の果て」という人もいれば「冬と春の気候の入れ替わりの果て」もあり、中には「終末を迎えた虚脱感」と感じる人もいるようで、まさに俳句の解釈は自由自在です。自分としては気候の入れ替わりの果てに一票です。