建築分野に貢献する技術開発を支援 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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建築分野に貢献する技術開発を支援

2023/06/05

今回は国土交通省によるスタートアップ支援という、少々珍しい補助金をご紹介します。事業名は令和5年度SBIR建設技術研究開発助成制度による『政策課題解決型技術開発』といいます。「一般タイプ」と「中小SU企業タイプ」の2タイプで構成されています。

ただし、「一般タイプ」はどちらかといえば企業より研究開発期間を有する一般社団法人等の非営利機関が対象で、締切も6月16日と間近なので今回は割愛して、事業名にSU(スタートアップ)の文字を含む「中小SU企業タイプ」を解説します。こちらの締切は7月28日です。

事業名にある通り「政策課題解決」がこの事業の目的であり、その政策課題とは「i-Constructionの推進やカーボンニュートラルの実現に資する技術開発」とされています。i-Constructionが国土交通省らしいですね。傘下で産学官連携体、「i-Constructionコンソーシアム」という組織も活動しています。

そして、内容としては「新しい工法や材料を活用し、建設分野における生産性向上やカーボンニュートラルの実現に資する技術開発」とされていて、あくまで研究開発対象は建設分野なのです。

また、「中小SU企業タイプ」が対象とする申請者は中小企業のみで、スタートアップを優先するというのですが、そのスタートアップの定義が経済産業省の補助金と比べるとかなり異なります。即ち、

  • 設立から15年以内の法人、または
  • 大学等の研究機関と共同研究を開始してから15年以内の法人
とされているので、おそらく全中小企業の2/3くらいは対象になるのではないでしょうか?経済産業省系の場合は長くとも設立5年以下であり、大学との研究開発期間などは無視するので、だいぶ様子が違います。

ところで本事業は全期間最長3年ですが、いわゆる2段階のステージゲート方式であり、1年目、2年目の終了時に、建設技術研究開発評価委員会によって行われる審査に合格しなければ次のステップに進めません。

このうち1年目は「事前調査」すなわちF/S(Feasibility Study)であり、2、3年目は「技術研究開発」とされていてR&D(Research & Development)です。このため2年目に進むための審査基準では当然ながら「新規応募段階で掲げたF/Sの目的がどの程度達成されているか」という項目があります。

従って1年目に行うF/Sをどれだけ充実させるかが重要ですが、一方2年目の終わりの審査基準は、「F/Sの目的」以外は1年目の終わりと全く同じなので、2年目については計画通りに研究開発を進めているかが評価されるようです。

ところで、募集要領で「補助金」という言葉が使われているのでそのままコピーしましたが、「補助金額」上限である1年目の500万円、2.3年目の各1,000万円には補助率の記載がなく100%の全額支給なのです。そしてつぶさに見ると、明記はないものの消費税も含めて補助対象となっています。

つまりこれは、経済産業省的には完全な「委託事業」です。このように考えると、本事業での3年間の総額2,500万円という金額は、たとえばものづくり補助金一般型とおなじく補助率1/2、消費税対象外というルールで計算し直すと総事業費約4,500万円に相当することになります。

このように中々お値打ちの「補助事業」なので、建築分野の研究開発課題に取り組む方には是非応募の可否をご検討されるようお勧めします。

本記事は2023/06/05時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

新緑の香に新緑の風を待つ (稲畑 汀子)

雨戸をあければ前日の雨が嘘のような青空という、宝物のような朝を迎えた経験はどなたもあると思います。そのような時に、窓から流れ込んでくるのが、掲句のような香りと風なのでしょう。