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Go-Tech事業の大型枠「出資獲得枠」とは

2023/06/19

3月にお伝えした第1回公募に続き、「成長型中小企業等研究開発支援事業」(以下、Go-Tech事業)の第2回公募が始まっています。3月の記事では以下の2点を中心にこの事業の概要をお伝えしました。

  • 複雑な連携体制条件と予算計画の立案に要注意
  • 最長3年の事業期間の中で自由度が高い開発経費配分

そしてこの事業には出資獲得枠というもう一つの特徴があり、よく見ると面白いのですが、前回はスペースの都合でこの枠の詳しい説明ができませんでした。

そこで今回は、3か月という短い間隔で第2回の公募が始まったタイミングをとらえ、Go-Tech事業の後編として「出資獲得枠」を深堀してみたいと思います。つきましては、申し訳ありませんが事業の概要については前編にあたる3月6日付の「コンサルタントの視点-開発経費の年度間配分が柔軟な産学連携支援事業」をご参照ください。

出資獲得枠と一般枠との最大の違いは、補助金額の大きさです。出資獲得枠の単年度の上限額は1億円、事業期間最長3年間の総額では3億円と、一般枠と比較して3倍以上の支援となり、技術開発のための資金としてはかなり実用化に近いフェーズでも賄える金額かと思います。

出資獲得枠への応募条件である「ファンド等の出資」には出資の種類など細かく定義されているのですが、要点だけお伝えすると、補助金総額の上限額が、ファンド等の出資者が予定している出資累計金額の2倍以下となるとの制限が課されるという点にこの枠の仕掛けがあります。

少し分かり難いので、これを補助金総額上限から見ると、Go-Tech事業の上限である3億円の支援を受けるためには、ファンド等から定められた期間中にその1/2,つまり1.5億円以上の投資を受ける計画があることを示す必要があることになります。

そしてもう一つの仕掛けは、この「定められた期間」が「補助事業開始から補助事業期間終了後1年までの期間」であるということです。つまり、補助事業に採択される前にファンドから投資を受けている場合は、上記の例の1.5億円の投資額にカウントされないのです。

即ち、その出資がカウントされるためには出資が補助事業の開始後というステータスにあるファンドの協力が必要であるということです。さらに出資を予定しているファンドに対しても、応募時点で当該研究開発に出資する旨の誓約書の提出が求められます。

応募時点でこの条件に合致するケースは珍しいのでは?と、思われるかもしれませんが、今回特に出資獲得枠の詳細をご紹介したのは「条件が合う応募者が少ない」ことを説明するためではありません。この出資獲得枠が、スタートアップにとって絶好の資金調達のチャンスであることをお伝えしたいのです。

将来事業として大きく成長すると信じるシーズを持ったスタートアップにとって、製品開発に必要な資金を調達することは経営の最優先事項です。このスタートアップにとって、この補助金は2つの使い道があります。

その1:ファンドのリスクを1/3にする
仮に事業化に向けた研究開発に必要な資金が4.5億円であった場合、「採択された場合の1.5億円の投資に関する出資誓約書」によりファンド側のリスクを1/3に削減でき、投資先の獲得が容易になる。

その2:事業化の加速
現時点でファンドからの投資予定が1.5億円であった場合、「採択された場合の1.5億円の投資に関する出資誓約書」により資金調達総額が4.5億円となり、開発速度が3倍になる。

如何でしょうか。この事業はスタートアップ専門の支援事業ではないので、スタートアップをあなたの会社の研究開発部門と読み替えていただいても結構です。この事業をチャンスと考えることが可能か、ぜひ一度ご検討ください。

本記事は2023/06/19時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

郭公や高さ競はぬ山二つ (太田 土男)

関東平野の真ん中に住んでいるので近くに山はありませんが、それでもこの季節は近隣の森林公園などからカッコウの声が聞こえます。あの声を聞くと不思議に肩の力が抜け、「競わなくとも良いのだ」と聞いた俳人の気持ちがわかる気がします。