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全国の中小企業にチャンス「TOKYO戦略的イノベーション」

2023/07/18

通常は全国から応募できる補助金を中心にご紹介していますが、今回は東京都による「令和5年度 TOKYO戦略的イノベーション促進事業」をご紹介します。

応募資格があるのは原則都内に工場やオフィスがある企業ですが、見ようによっては「準全国版」と言えるかもしれません。これは後程説明します。

この事業は、東京都が作成した「イノベーションマップ」に掲げられた「開発支援テーマ」に該当する開発を支援する事業であり、助成金上限8,000万円、助成率2/3は自治体の助成金としてはトップクラスの規模です。

「イノベーションマップ」というのは東京都が2015年に初版を電子冊子の形式で公開し、その後毎年更新しているもので、この中で中小企業が次代の成長産業分野への参入を検討する際の指針として示されているのが「開発支援テーマ」です。

開発支援テーマは、途中で見直しはあったものの、2018年から以下の9つの分野として示されています。

(1)防災・減災・災害復旧、(2)インフラメンテナンス、(3)安全・安心の確保、
(4)スポーツ振興・障害者スポーツ、(5) 子育て・高齢者・障害者等の支援、(6)医療・健康、
(7)環境・エネルギー・節電、(8)国際的な観光・金融都市の実現、(9)交通・物流・サプライチェーン

一望するだけで広い分野にまたがっているのがわかります。この中から自社の技術に該当するテーマを探すのは容易かと思われます。

一方で、これらは従来の技術分野ばかりとも言えます。個人的な感想では、成長分野と言いながらAIや航空・宇宙分野、アグリテック関連といった最新分野が漏れているのは不思議な気がします。事業の継続性という観点では、最新技術分野を毎年のように取り込んでいくのは難しいのかもしれません。

ところで、この事業の特徴は、最長3年という事業期間の取り扱いが相当にフレキシブルであるという点です。まず事業期間が1年から3年の間で選べ、期間にかかわらず上限額は8,000万円です。そしてその事業期間を、1年以上の期間を単位にして複数の期に分割することができます。

つまり、事業期間を2年とし、全期間を1期としても2期に分けても許されるということです。そして、相当の理由があれば事業期間を最長3年まで延長することが可能です。

実際にご支援した例では、1期1年×2の2年間という事業計画について、採択後の外部環境の変化で2期目を延長してもらい、合計3年で完了することができました。

さて、開発支援テーマのカバレッジは広く、事業期間の取り扱いがフレキシブルでも、支援対象が都内の企業に限定されるのであれば東京都以外の企業は応募できないのですが、ここで、なぜ「準全国版」なのかを説明します。

東京都以外の全国からこの事業に応募できる条件は2つあります。1つ目は都内での起業を目指している「創業予定者」です。2023年8月1日時点で都内での創業を計画しており、交付決定時(2024年3月頃)までに都内での登記が完了する予定の個人が該当しますが、申請の時点の住所は問われません。

2つ目は都内の中小企業と連携して事業を行う全国の事業者です。申請者になるためには「都内に登記簿上の本店又は支店がある」中小企業または前述の創業予定者であるとの条件を満たすこと必要ですが、もう一つ、「企業または大学等研究機関との連携先が1つ以上ある」ことが応募の要件となっています。

そして連携先には都内の企業という縛りはありません。例えば3、4社の間で自社の得意分野を持ち寄ってこのような関係が構築されている場合、その内1社だけ住所が都内であれば、すべての企業が参加する連携体として応募が可能なのです。

このような例はよく見聞きしますが、もし該当するのであれば是非一度、連携先に公募要領を見せて相談してください。

本記事は2023/07/18時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

守宮出で全身をもて考える (加藤 楸邨)

この季節、我が家の裏窓にもよく守宮が張り付いていて、気持ち悪いと思うものの、流れるような曲線を描くその姿勢に愛嬌も感じます。不思議なのは眺めている間はピクリとも動かないくせに、2、3秒目を離したすきにいなくなってしまう俊敏さです。こちらの視線を感じる能力があるに違いありません。