研究開発スタートアップ向け大型補助事業 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

HOME > コンサルタントの視点 > 研究開発スタートアップ向け大型補助事業

研究開発スタートアップ向け大型補助事業

2023/07/31

今回は経済産業省の令和4年度補正予算による「中小企業イノベーション創出推進事業」をご紹介します。この事業は事務局側が設定した技術課題を解決するスタートアップ、またはそのスタートアップを含むコンソーシアムを支援するという事業です。

今回設定された技術課題(テーマ)は6つですが、どれも大変具体的で、しかも1件当たりの支援額が3億円から134億円と膨大です。その内容を、最初のテーマである「月面ランダーの開発・運用実証」について見てみましょう。この課題の参考資料に示された「公募テーマの内容」の一部を引用します。

「(前略)本テーマでは、100kg以上のペイロードを月面輸送するための月面ランダーの開発(設計・製造・組立)、打上げ及び運用(軌道制御、着陸誘導制御)に係る実証を支援する。(後略)」

「月面ランダーの開発・運用実証」もそうですが、他の5つのテーマもキーワードだけを列記すると「衛星リモートセンシング」「空飛ぶ車の機体開発」「ドローンの開発・実証」「小規模分散型水循環インフラ」とされていて、どれもかなり技術的に絞り込んだテーマであることがおわかりかと思います。

そして前述の「参考資料」というのはすべてのテーマに対して提供されており、「公募テーマの内容」を含めて18~20ページにわたる具体的な達成目標やその評価方法などが詳細に示されています。

このように見ていくと、公募要領の表記では「補助事業」とされていますが、内容的には政府の課題をスタートアップが代行し、その費用を全額政府が負担する「委託事業」に該当します。

現に補助事業では補助の対象とならない消費税についても、間接費の対象経費として明記されており、税務上の扱いも委託事業であることがわかります。

話題は変わりますが、公募要領のタイトルには示されていないものの、この事業には「SBIR推進プログラムフェーズ3」という別名が付いています。

この「SBIR推進プログラム」とは、内閣府のガバニングボードにより決定された研究開発課題に取り組む研究開発型スタートアップ等を支援するプログラムであり、経済産業省の他にも文部科学省、農林水産省、国土交通省その他、多くの省庁が参加しています。

そしてフェーズ3というからにはフェーズ1と2があるのですが、2023年度については5月までにNEDOによって「SBIR推進プログラム(一気通貫型)」という事業名でフェーズ1と2の公募が行われました。そして今回のフェーズ3は、経済産業省から委託された一般社団法人低炭素投資促進機構が事務局となっています。

フェーズ1の対象はFSレベルの研究開発、フェーズ2の対象は実用化開発であり、今回のフェーズ3における社会実装で一通りラインナップがそろうことになりますが、すべてのフェーズで示されている課題がかなり具体的であることは共通しています。

特にフェーズ3にあたる今回の公募では、課題ごとに該当するスタートアップの社名が思い浮かぶほど具体的な内容になっていることから、応募できる企業は少ないと思いつつ、政府が現時点で育成すべきと考えている技術分野がショーウインドウの展示のように示されているのであえてご紹介しました。

残り1か月の公募期間を考えると、すでに対象となる技術分野の開発実績を持つ企業以外は応募が難しいとは思いますが、今年度から5年間続く「SBIR推進プログラム」のスタートとして見ていただけば、自社の技術開発を検討する手掛かりにしていただけるのではないでしょうか?

本記事は2023/07/31時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

アイスクリームおいしくポプラうつくしく (京極 杞陽)

まだ夏がこれほど熱くなかった頃の、まぶしかっただけの夏の街角です。一方で、夏が身のうちのエネルギーを活性化する季節であったころの記憶も思い起こされます。