対象の広い環境系研究開発支援
今回は環境省傘下の独立行政法人環境再生保全機構による「令和6年度環境研究総合推進費」という補助金をご紹介します。公募区分が多く、区分ごとの上限額の幅が300万円から3億円とかなり広くなっています。
しかも補助率が1/2の補助金と100%支援の委託費との混成となっていて、全体像を理解するのに少々苦労します。2017年度に始まった事業ですが、区分構成の変化を順に見ていくと、多くの補助金がそうであるように時間が経つにつれて徐々に複雑になってきたことがわかります。
その区分構成を説明する前に、民間企業も公募対象であるにも関わらず、この事業で採択された機関がほとんど大学または公的研究機関であるという点をお伝えしなければなりません。
2017年度以降すべての採択実績が公開されているので、データを追いかけてみると、2021年に公募が行われた「令和4年度事業」までは民間企業の採択はゼロ、2022年公募の「令和5年度事業」で初めて民間企業が1社採択という状況です。
因みに、同年の全358件の応募から選ばれた94件の内のその民間企業1社とは、blue and tech株式会社という気候関連技術のスタートアップでした。(拍手!)
残念ながら全応募件数の中の民間企業の件数は公開されていないため確認はできませんが、民間企業の採択数がこれほど少ない理由は、単純にこの事業を民間企業も対象とすることが広く知られていないためではないかと思われます。
というわけで、今回この記事を見て興味を持った中小企業やスタートアップの方々のために、もう少し詳しく区分構成について説明します。
現在公募が行われている令和6年度事業は、委託費である「環境問題対応型研究」「革新型研究開発(若手枠)」「戦略的研究開発」と、補助率1/2の補助金である「次世代事業」の4つの区分(以降、「大区分」)で構成され、その各々がさらに2~3の区分に分かれていて、全部で9つの区分で構成されています。
そして、「環境問題対応型研究」「革新型研究開発(若手枠)」「次世代事業」に含まれる7つの区分については共通の行政ニーズに基づく「行政要請研究テーマ」が提示され、採択の際に重視されます。申請者はその中から自身の研究内容が合致するものを選んで応募することが可能です。
面白いのは、本事業の「大区分」は研究「分野」ではなくて、基礎研究から開発を経て社会実装に至る研究開発の「フェーズ」を示しており、応募者は次のように研究段階のどれにあたるかを、年間の研究開発費の金額を基準にして自分で判断するという点です。
「革新型研究開発(若手枠)」(300~600万円/年)
↓
「環境問題対応型研究」(4,000万円以内/年)
↓
「次世代事業」(2億円以内/年)
また、少々驚くのは、その「行政要請研究テーマ」が年度ごとに更新されることと、テーマ数の多さです。8月21日の時点では令和6年度の「行政要請研究テーマ」が未公開のため内容が確認できませんが、令和5年度のテーマ数は49、令和4年度のそれは45でした。おそら令和6年度もこのくらいのボリュームとなるでしょう。
一方、「戦略的研究開発」については、大枠として複数のプロジェクトと各々の総事業費が示されます。以下は令和5年度事業の例です。
- S-21:生物多様性と社会経済的要因の統合評価モデルの構築と社会適用に関する研究 3億円
- SII-10:海底プラスチックごみの実態把握及び回収支援に向けた手法・技術の開発 1億円
- SII-11:世界の主要都市に関する気候安全保障リスクの評価 1億円
以上のように、持続可能な社会構築のための環境問題を解決に導く環境政策への貢献を求めるこの事業は、具体的な課題が多く示されているので、環境に係る技術を有する企業がもし対応できる課題を見つけることができればかなりのチャンスかと思います。
近々令和6年度事業の「行政要請研究テーマ」や「戦略的研究開発プロジェクト」の詳細が公開されるので、ご興味あれば是非内容をご確認ください。
季節の俳句
てにをはを省き物言ふ残暑かな (戸恒 東人)
初秋の季語は、「秋立つ」や「新涼」などその多くが、夏の暑さが引いていくことへの情緒を乗せていると感じますが、「残暑」のみは夏の疲れを引きずっていて、少し変わっています。昨今の暑さは、確かにものを言うのもおっくうになります。
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