特許事業に前払い助成金 - 研究開発系補助金のスペシャリスト アライブ ビジネス

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特許事業に前払い助成金

2023/09/05

今回は、公益財団法人市村清新技術財団による「第112回令和5年度(第2次)新技術開発助成」をご案内します。この事業は1968年の財団設立以来半世紀以上、「我が国の産業・科学技術の新分野等を醸成開拓し、国民生活の向上に寄与する」目的で、原則年2回の公募を継続している大変立派な事業です。

本サイトでもすでに何回も取り上げており、前回解説したのが2020年、第106回公募でした。その際にも助成金の構成に長く変化がないことをお伝えしましたが、さらに3年が経過した今回まで相変わらず変更はありません。

とはいえ、政府の補助金と比べて「助成金の前払い」「消費税も支援対象」などの特徴で相変わらず人気が高い事業なので、今回は応募する際の申請書の作成にあたり、その特徴とポイントをご紹介します。

まず、補助金や助成金は公募要領のどこかに必ず審査の際の基準が書かれているので、その基準を満たすように申請書を作成することが基本ですが、本事業の公募要領については第2項の「助成対象」の中の「開発技術の要件」が審査基準に該当します。

「開発技術の要件」は7項目で構成されていて、その中にはさっと読んでしまえば見落とすかもしれない特徴があるので注意が必要です。一つずつ見て行きましょう。

  1. (1) 〈略〉基本技術の知的財産権が特許の出願もしくは特許権の取得により主張されていること
    以前は実用新案登録も対象でしたが、現在は「特許」に限られています。まだ出願前でも公募締切日までに出願できればよいので、優れた発明をお持ちなら弁理士に相談すれば今からでも十分間に合います。

  2. (2) 開発段階が実用化を目的にした開発試作であること〈略〉
    「“原理確認のための試作”や“商品設計段階の試作”は対象外」との説明がついていますが、採択案件の紹介記事を見ると、ほぼ製品化に近いものも採択されています。あまり気にする必要はないかもしれません。

  3. (3) 実用化の見込みがある技術であること
    この基準を満たす方法は技術の内容を説明するより、現実にある需要にこたえる技術であることを示すことです。「作ってくれたら買う」といってもらえる顧客が複数いることを申請書に書ければ評価は高まるかと思います。

  4. (4) 開発予定期間が原則として1年以内であること
    (3)とも関連して「1年間の開発が終われば翌年中には製品として出荷が可能」という意味です。少なくとも申請書上ではそのように読みとれるような書き方が必要です。

  5. (5) その技術の実用化で経済的効果、または地球温暖化防止が大きく期待できること
  6. (6) 自社のみの利益に止まらす、産業の発展や公共の利益に寄与すること
    どちらも文章力で評価を高めるしかない項目です。インターネットで関係のありそうな産業分野を広く当たって、説得力のあるデータを提供しましょう。

  7. (7) 同じ技術開発内容で、同時期に、他機関からの助成を受けていないこと
    例えば「一昨年ものづくり補助金をもらったのでダメ?」などとあきらめないでください。よく読めば、ものづくり補助金の事業期間が終わっていることから、「同時期に」の条件にあたらないので応募可能であるとわかります。

以上、今回はこの助成事業への応募申請の書き方について少し細かく見てきましたが、採択される自信は湧いてきたでしょうか?特許技術の製品化に特化した助成金なので、該当するのであれば採択率は高いと考えてチャレンジしてください。

本記事は2023/09/05時点での情報です。状況は刻々と変化しますので、必ずその時点での最新情報をご確認ください。

季節の俳句

ひんがしへ 雲とぶ二百十日かな (池内 けい吾)

今年の二百十日はどのメディアも関東大震災100周年とかで記念番組ばかりでした。しかも朝鮮人虐殺の話題が例年より多かったような気がします。季語では「厄日」とも言いますが、歴史を曲げようとする動きに不穏なものを感じ始めたメディアの抵抗であってほしいと思います。